魔法少女リリカルなのはLOST Battle
七ページ
《がぁあああぁっ!》
ライダーの動きは視界に捉えられない程に速度を増し、スバルを完全に翻弄している。その猛攻に耐えながらチャンスを待つ。
「うぉおおぉぉぉっ!」
ウイングロードを全速力で駆けながら拳を、脚をライダーに突き出す。擦りもしないが、それでも自分への攻撃は中断される。
手刀がハチマキを掠め、髪が数本空に跳ばされた。
すれ違うはずがライダーは両足の車輪を前後逆に回し、スバルの真横で急旋回しながら蹴る。怯んだところで更に右腕で頭を掴み、ビルに二人揃って叩きつけた。
ライダーはそのまま壁を破壊しながら突き抜けていく。スバルは全身を襲う衝撃で動けない。
《ライドメモリー!》
両太股に収納されている二挺の引き金を引いた。ビルから伸びる紫色の軌跡が魔力爆発を起こし、ライダーはスバルに追い討ちを掛けようと走る。
だが、左肩が限界を超えた。
火花を散らしていた肩から千切れ、左腕が地に墜ちていく。
《ふん、スバルに勝てるならば…惜しく無い!》
崩れ落ちるビルが土煙を上げ、そこから青い道が伸びてきた。ライダーはそれに目がけて両足を叩きつける様に蹴りを放つ。
大怪我をしたスバルが血を体の至る箇所から流しながら出てきた直後、ライダーが狙った通り直撃。
その体が吹き飛んで地面を転がった。
ライダーは全身の車輪をバックさせて速度を殺し、地上で止まった。
意識が朦朧としているスバルは、ライダーの姿がよく見えない。
「……」
一筋の涙が、スバルの頬を濡らした。
(やっぱり…私じゃ……)
「駄目なの、かな……」
「馬鹿野郎!」
「!?」
突然怒鳴られ、スバルの体が持ち上げられる。襟を捕まれ、見たのは蒼い髪の青年。真っ直ぐ目を見ながら、頬を叩いた。
パチン、と軽い音を立てて叩かれた頬が赤くなる。
「諦めるな!アイツが倒せるのはお前だ!ライダーはお前を倒す為に命を捨てた!仲間を本気で助けたいからだ!分かるか!」
「――」
スバルは、息を飲んだ。ファルドの姿は自分以上に酷い。傷が開き、全身が赤く染まっている。
その後ろには破壊されたガジェットフレームが大量に転がっていた。
「もしもお前が負けたくないと本気で思うなら諦めるな!絶対にだ!勝つ為に走れ!その為の翼がお前にはあるだろ!」
「ファルド、さん……」
「…叩いて悪かった。だが、スバルには丁度良いだろ?」
襟を放し、頭を軽く撫でる。ファルドの言う通り、勝利の為の翼はある。
最後まで走ると約束した相棒から。
「…頑張れよ。俺は、悪いが…少し休む……」
膝を着くファルドの元にナンバーズが駆け寄り、スバルはそれに背を向けて涙を拭う。
《……》
ライダーの体には既に無数の破損がある。スバルの一撃ではなく、自らを破壊する限界を超える速度を求めた代償として。
それでも戦う事を止めない。走る事を止めない。片腕を地面に立て、両足の車輪を空回りさせて魔力を込める。
《……俺の体も直に限界が来る。そう遅くは無い》
「私も…ライダーの攻撃でボロボロ…」
《放っておいても俺は壊れる。コレが最後だスバル・ナカジマ…》
「うん…!絶対に、負けない!」
マッハキャリバーがウイングロードを空に飛ばす。
そうして、二人の戦いに終焉が訪れた。
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