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魔法少女リリカルなのはLOST Battle
九ページ
「っ…!ぐっ、あ………!」

「……ロア」
その様子を見たファルドは、デバイスを杖代わりにしながら近づく。それをロアは手で制した。

「来る、な…ファルド…!」

「…………」

足を止め、左腕をだらりと下げたまま固まる。ロアの眼が、哀しみで潤んでいた。


「頼、む……オレを……!」


―止めてくれ…!


「ロア…! っ!」

更に近づこうとした瞬間、ロアが呻き声を上げて苦しみ出す。それに気を使い、進もうとしたファルドの足がまた止まった。

自分も体のダメージで思う様に動けない。
予想以上に被害は深刻な様だ。

一度着いた膝は、地面とくっついた様に上がらない。右腕が無いのかと錯覚するまでに感覚が麻痺し、数歩先のロアが霞掛かって見える。

目の焦点を無理矢理合わせ、身体を痛め付けながらもファルドは立ち上がった。

「お前…」

「くそっ!」

顔を上げたロアの眼は金色に輝き、怒りで歪んでいる。右手を握りしめ、左手を地面に着いてゆっくり立ち上がり、ファルドを睨む。

「…続き、だ!続きをやろうじゃねえかファルド!」

「……あぁ、そうだな」
 歯軋りしながらも、ファルドは剣を構えた。

止めてくれという親友の願い。

止められない自分の未熟さ。

(ロア……お前は俺じゃ止められない…)

だが、それでも。止めてやりたかった。

「……ロア」

「くっ…!」
右腕が痛むのか、時折苦痛に顔を歪めながらロアは構えを解かない。
そんな二人の間に一人の影が降りた。

「アブソリュード」
 目の前に現れた男の手から氷を連ねた様な鎖が伸び、ファルドを包む。

「っ…!レイス!」

名前を叫ぶが、氷が弾けた瞬間ファルドの姿は無い。

上下共に白いコートのようなバリアジャケットはどことなく儚い印象を受ける。

「っ!テメエ何のつもりだ!いきなり現れて、ファルドをどっかに飛ばしやがって!」

「手間取っていたようだからな。それより、早く用を済ませたらどうだ」

「言われなくてもそうする!」
 青髪を長く伸ばしたレイスの襟を解放し、ロアは苛立つ様に立ちすくむヴィヴィオに近づく。

「……けっ」
それを一瞥すると、横を通り過ぎてそのまま教会の奥へ去っていった。
レイスは何をするでもなく、自身を転移魔法で移動させて消える。

「……ヴィヴィオ!」
「ぁ……」
一人になった瞬間、シャッハがヴィヴィオに駆け寄った。

教会の中庭は酷い有様になっている。木々は倒れ地面も抉られ、一部の建物が倒壊し煙が上がっていた。

「怪我はないですか?」
「うん……」
「良かった…なのはさんが心配しますからね。早く避難しましょう」
 シャッハはヴィヴィオを抱き上げると、避難場所へ連れて行く。腕の中の小さな聖王は、震えていた。









――聖王遺品管理室


「……無用心だな。警備の一人くらいいるもんだと思ってたんだがよ」
 ロアは無人の教会で一人呟く。目の前には巨大な扉があり、その先に聖王の遺品が保管されている。

扉に手を着いたまま開けず、殴った。勢いよく開いた扉は中に吹き飛び、派手な音を立てて部屋の奥で止まる。

「…………」
その中へ一歩。足を踏み入れた。真っ直ぐ進み、薄暗い部屋の中央辺りで足を止める。
 ロアの周囲には自分が本来潰すべき聖王に関する書物や遺品が保管され、綺麗に並べられていた。

「…ここで間違いない、か。徹底的にやらせてもらうぜ、聖王教会!」


深紅の魔力光が、部屋を照らす。ロアの足元に展開されたベルカの剣十字の輝きが増していく。

「あばよ、忌々しいゆりかごの王様」

それだけを言うと、ロアは“徹底的”に破壊し尽くした。

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あきゅろす。
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