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魔法少女リリカルなのはLOST Battle
八ページ
「へっ、そんな体でよく追い付けたな」
「ああ、少しだけ無茶をやった。お前の所為でな」

ファルドの全身には無数の傷が付いている。ロアに追い付く為にフレームを一掃しながら来たのだから無理もない。

更に、ヴィヴィオを守る為に強力な一撃も受け止めた。目に見えてファルドの方が不利である。
それでも戦う意思が見えた。

「ロア。お前は俺が許せないと言ったな。俺もお前が許せない」
ケルベロスの切っ先をロアに向けるファルド。
その瞳に手加減という文字は無い。

既に限定使用解除している時点で、如何に本気かが分かる。ロアも同様にデバイスのリミッターを解除した。

「お前がその気ならこっちは手加減する必要はねえよな」
「加減する余裕があるならしていろ」

「………」
聖王の器であるヴィヴィオからすれば今以上に怖い状況は無い。
二人の前では聖王の鎧は何の役にも立たないのだから。

だが、その内の一人は自分を助けた上に戦おうとしている。

傷ついた体で。それとは正反対に傷一つ無いロアと。

「…兵器なら、何でそこの聖王を倒さない」

「横取りしそうな奴を倒してからやるさ」
「そいつは俺か?」

「ああ、お前からだ」
 言った直後にファルドは剣を振り、ロアは迎撃の拳を振り払う。
金属音と共に魔力が破裂し、二人を吹き飛ばす。

再度ファルドは切り掛かり、剣を振る。
ロアはそれを足で弾き、更に片足のまま回し蹴りで蹴り飛ばす。

左手のシールドで防ぎ、先程とは逆の方向から薙払い。素早くしゃがんだロアの頭の上を通り過ぎ、反撃のアッパーがファルドの顎を狙う。
 遠心力で体を捻って避けた体勢から、右足の膝蹴りで腹を打ち、一度離れる。

零距離では武器を持たないロアが有利の為、ファルドは離れてケルベロスのガンフォームから魔力弾を連射しながら牽制していく。

「ちっ!」

拳で相殺するロア。一発目は右手を突き出し、二発目は左手で打ち払い、三発目を右足で弾き、反らす。

「カートリッジッ!」

右腕を引きながらカートリッジが十発、機関銃のように弾き出された。

膨大な魔力が拳に集中する。

「っ!」

「炎翔烈火ぁ!」

ロアが右腕を教会の地面に打ちつけると、炎の津波が一気に襲い掛かる。
避けるのは簡単だが、背後には動けないヴィヴィオが立っていた。


(避けるしかない…)

―見捨てるのか…?

(その後死角から一撃。それで決める…)

―見殺しにするのか?

(MCSを起動させて…)

―助けないのか

(限界突破で…)

―後悔しないか!

「…くそったれがぁぁぁっ!」




教会の中庭が半壊し、瓦礫が周囲に飛び散る。

「……っ!くそっ、流石にこっちが保たないか…」
ロアが右腕を押さえて呻く。デバイスにヒビが入り、指が痙攣していた。
 扱い切れない様な魔力を無理に使った所為で、腕とデバイスに過負荷が掛かったのだ。


(まあいい。俺の狙いは初めから聖王の遺品だからな……)
ロアは右腕を押さえながらその場を去ろうとした。


カァン!

「…待、てよ……まだ、終わってないだろ…!」

剣を杖代わりにして、煙の中でファルドが立ち上がる。
左腕のジャケットが破れ、血が流れていた。

口から血を吐きながらも、

笑う膝に喝を入れて、

感覚の無い右腕に力を込めて立ち上がる。

「全く…破壊力だけは、トップレベルだな…ロア。防ぎ切れなかったぞ」

「…………」

ボロボロになったファルドの後ろでヴィヴィオがゆっくり目を開け、息を呑んだ。

「……お前はどうして…そうやって他人の為に戦える」

「知ら、ないな…そんな事は。避ける暇が無かったから防いだ…ただそれだけだ…!」
剣を地面から抜き、右腕で構える姿は見ているだけで痛々しい。
 それでもファルドは剣を離さない。


「蒼天の守護騎士を砕くにはまだ足りないな、紅蓮の破壊者…」

「……お前は…本、当に…!」

ロアが膝を着き、左手で頭を押さえ、苦しむ。

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あきゅろす。
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