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魔法少女リリカルなのはLOST Battle
五ページ
「…昔、似たような光景を見た事あるよな。誰かを庇って、仲間が死んだ」
「―――」
息が詰まり、脳裏に浮かぶ悲劇。


――隊長!危ない!

「………」
「何人死なせた?ファルド」

「…違う……!俺は!」

「何が違うってんだ!あぁ!?単独で聖王を破壊するお前と!ゆりかごを破壊出来る俺のなにが!」

「俺は誰も殺したくなかった!兵器として生まれたとしても、俺は…!」

「古代ベルカの技術者が、ゆりかごに対して造り上げた兵器!『蒼天の守護騎士』と『紅蓮の破壊者』!その事実があんのにお前は自分を兵器として否定すんのかぁ!」

「俺は!ファルド・ヴェンカーだ!聖王を止める為の兵器じゃない!もう俺もお前も戦う理由はないはずだ!」

「ゆりかごが破壊されたからか?だったらこんな戦争は何で起きた!…他でも無い、お前の所為じゃねえのか!」

「っ……」

「お前が動けば人は死ぬ。必ずな」
「…だが、俺が動かなかったら余計に死ぬ」

「いいや違うな!お前はそう言いながら戦いたいだけだ!」

「そう思いたかったらそれで構わない!それでも俺は!あの日の思いをしたくないんだ!」

「アレは部下の失敗じゃねえのか!それを何故お前が背負う必要がある!俺はそいつが、気に食わないんだよぉ!」

ロアが爆発する様に吠えると、拳をファルドに叩きつけた。
ケルベロスで受けとめたが、衝撃に耐え切れず吹き飛ばされる。

「ぐっ、あ…!」
「兵器として作られたんなら、人間とつるむ必要があるかぁ!」

ロアが力任せに叩きつけた魔力は炎となり、広範囲に渡ってファルドもろとも街を爆発させた。

空に逃げたファルドの左腕から血が流れ、額からも赤い線が描かれている。
ロアはそれを追って拳を構えた。

「生憎だが、俺はこれ以上お前の相手をしてる暇はねぇ」
「て、めぇ…!」

フレームの大群がファルドを包囲し、右腕を構える。

「それともう一つ。ドクターの狙いは管理局だが、ゆりかごを越えた『楽園』だ。覚えてるよな?お前が左腕を失い、生死の境を彷徨った挙げ句に七十数名の被害を出した古代遺物……」

「…ま、さか」

「ああ。どうも『ソイツ』が本当の目的らしいがどうだっていいよな。あばよ、ファルド」

頭の芯から何かが抜けていく感覚で体が動かないファルドの周囲の一体が爆発した。ロアが破壊したのだ。

 抵抗の意志すら見せないファルド目がけてロアは魔力を込めた衝撃波で叩き、地面へ落とす。
意識があるのか立ち上がろうとしている。しかし、それを見放したロアはそのまま何処かへ飛び去った。



「…………」
目頭が熱くなり、涙を流す。
未だに自分が涙を流せる事に驚きながらもファルドは声も出さず、ただ泣き続けた。

こうも弱い存在だったのかと。

戦いたくないという思いが頭の中で交ざりあっていた。


しかし、それ以上に悔しくて許せなかった。

「畜生…!」

気付いたから。思い出してしまったから。

自分が兵器という事を。

戦う為の存在なんだと。

「畜、生…!」

空が青いのに。そんな自分に優しく接してくれた彼女達が戦っている。


自分が如何に自惚れていたか気付いた。

同じ人間じゃない。自分が兵器なんだと。

あの部隊のような場所は望んでいけないんだと…










「畜生…!」

暴れたくなった。壊したくなった。
自分が居る世界を。




「うぅあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」


ファルドは、ただ感情に任せて吠えた。空に届く様に、自分を立たせる様に。


「限定使用解除…!」

立ち上がった足元に六芒二重円の魔方陣が浮かび上がる。

二重円が消え、真逆に重なり合うベルカの剣十字が三角の魔方陣を描いた。


「俺を…!」

涙を拭う事はしなかった。今は敵をひたすらに壊したかった。

「戦わせるなぁぁぁぁぁっ!!」



ファルドは目の前のガラクタをただ破壊し続ける。

「あぁぁぁぁっ!!」

治まらない怒りが世界を傷つけた。

「はぁ、はぁ、はぁ…!」

剣で、拳で、脚で、頭で、とにかく壊し、砕き、暴れた。



ファルドの周囲には、剣で切り刻まれた鉄屑が転がっている。そんな中にただ一人立つ男は笑った。

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