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魔法少女リリカルなのはLOST Battle
一ページ

――WARS宿舎

 早朝。まだ日が完全に昇りきらない時間帯。誰一人起きる事はない。
一人だけを除いて。

「…………」
妙な胸騒ぎがして眼を開けた。だが何も異常は無い。天涯孤独な自分が女性と一緒に寝ていた事以外は。
 未だ寝ぼけている頭を引きずりながら顔を洗いに行く。

生暖かい水が眠気を飛ばし、壁に頭を打ちつけてようやく頭が働き始める。
 シワのついたシャツを着たまま屋上まで歩く。明るくなり始めているミッドチルダの朝は異様に静かだ。

それに比べればここ、WARS宿舎の数日間は騒動三昧である。その大半に巻き込まれている自分の疲労は尋常ではない。
だが、それなのに目が覚めたのは何故か。

肌が焼ける様な痛みを走らせる。
いつかの戦いのように。

巨大な闘争を前に体が騒ぐ。背筋を駆け上がる高揚感。

「……一週間。動くのか、ロア」
最低限の期限は過ぎた。そうなら動くだろう。
いや、必ず動く。ファルドはそう確信していた。

「準備体操でもするか、ケルベロス」
《Yes》
デバイスを構え、周囲にはスフィアが大量に出現する。剣を振り、一つのスフィアに向けて息を吸い込み深く吐く。

「…いくぞ」
スフィアが動き、ファルドの周囲を飛び回る。
その一つが光り、剣を振り下ろす。スフィアが消えて別なスフィアが光る。
更に剣を振り、またスフィアが消えた。

実戦における的確な動きや反射的な動きを鍛える為のファルド独自の早朝トレーニングは朝食に呼ばれるまで続く。早く起きた時に実施するこのトレーニングは体力と魔力が続く限り終わらない。

 そんな特訓をしながらもファルドはまだ悩んでいた。自分がここに居ていいのかを。
組織に関する情報は最低限話し、それ以上は話さなかった。

自分は両者の敵であり、味方である。だが組織に戻るつもりは無い。
ケルベロスが言った言葉を裏切らない為に。

 民間魔導師という立場で部隊に協力している、事になったのは部隊長の独断であった。どうあってもはやてはファルドを部隊に欲しいらしい。
元々面倒見のいいファルドも経験の浅い部隊長が心配だった。

自分と同じ失敗をさせたくない。ただそれだけの理由で。


「…思い出したくないのにな」
独り言を呟きながら剣を振り続ける。朝日が昇り地上を照らしていた。
ガチャリ。屋上の扉が開き、シグナムが足を踏み入れる。

しかしファルドはまだ手を休めない。

「随分練習熱心なのだな、お前は」
「黙っているのが、苦手なだけだ!」
片足を軸に剣を周囲に薙払う。目の前で光るスフィアに下から斬り上げる。

「そうか。それと、朝食だから早く来た方がいいぞ」
「分かった」
「それではな」
それだけ言ってシグナムは屋上から去っていった。
扉を閉める音を聞いたファルドはスフィアを全て消して荒くなった呼吸を整える。
 汗を流す為に一度シャワーを浴び、それから食堂で騒がしくも楽しい一時を過ごした。

そんな平和も終わる。始まりの合図は深紅の青年の激情から。

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あきゅろす。
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