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魔法少女リリカルなのはLOST Battle
プロローグ
「…………」
目が覚めて見たのは何も無い天井。灯りの無い、薄暗い部屋の無機質な臭いが肺に貯まる。
 息を吐き出し、空気を入れ替えようにも同じ鉄の臭いが肺に貯まった。

「…………」
何も無い空間に手を伸ばす。いつかの相棒もそうしていた。嫌な事や思い出したく無いことがあると誰も居ない場所でこうやって手を伸ばす。
 その癖が移ったのかもしれない。

眼を閉じれば耳に入る殴打音。肉を抉る拳の感触。食道をさかのぼる熱い液体。
血の臭いがついた空気。

焼けて溶けそうなまでに熱い肌。

「…………」
だがそれらは幻想だ。今は何も無い。ただ静かに時間だけが流れていく。
しかし現実だ。確かに一度、自分はその紅蓮の地獄に居たのだから……


『蒼い騎士』と共に、『復讐』の為。

『紅い闘士』として、『復讐』の為。


…今でも忘れない。死の淵を彷徨いながらも戦った戦場を。
主を守る獣として立ちはだかった竜を。

「…………」
過去を思い出すのを止めた。そうしなければ自分が壊れてしまう。

『人間』としての自分を。

そして戻ってしまう。

『兵器』としての自分を。

 もう一人いる。同じように『人間』になろうと足掻き、『兵器』としての役目を忘れようとしている男。

「…………」
ドクターは簡単に告げた。

“役目は終わった”

たったそれだけ。

そして続けた。

“結局君達二人は使命を全う出来なかった欠陥品だ”

その通りだと思う。

人の創ったものに、『完全』は存在しない。

だからあの男は『壊れた』

作り物なのに。

自分達の命を道具程度にしか見て居ない忌々しい偽善の集団に。

『誰かを守りたいから』

「…………」
そう言っていた。

そんな事は出来る訳がない。

『兵器』だから。

『破壊』する事しか出来ないから。

守れるのは自分だけだ。

それなのに誰かを守れると信じているあの男が羨ましい。

『誰かを守りたいから』

なら自分は『兵器』として

『自分を守りたいから』

戦う。

理由は無い。


「……オレも、兵器だから」

それが精一杯の理由。

だから、届かない。

優しい彼女の傍に居られる資格が無い。

それでもいい。そんな人間が居たという事が分かったから。

「…………」
時間だ。今日から忙しくなる。

戦争だ。


多分、誰も止められない。

「…………」

オレも。

止めようとして何人も死ぬ。きっと苦しむ。きっと悲しむ。
だけど止まらない。

止められない。

兵器だから。人間じゃ無いから。

部屋を出て廊下を歩き、一段と広い部屋を埋め尽くす機械の人間と同じ。

「……」
始まってしまう。

白衣を着た死神の一声で。

凄惨で悲惨で無惨な戦争が。


「気は熟した。もう充分だ……だから始めよう」

始まってしまう……。


「時空管理局に愚かな鉄槌を降ろそう。そして潰そう。打ち砕こうじゃないか諸君」


もう、止まらない…。

誰にも……。

オレも……。

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あきゅろす。
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