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Break S.Novel
気紛れな風の悪戯
「あ、ライ……」
「ん? なんだスバル」
「……ダー!?」
 廊下で声を掛けたライダーが振り返り、スバルは絶句した。それと同時刻に会議室で緊急連絡が行われている。


「諸君、大変だ。ライダーが女になった!」
『な、なんだってー!』
「その原因は言わなくても分かるだろうから北斗七星の隣辺りに吹き飛ばしておいた。連絡事項は以上、薬の効力が切れるまでアイツは女だから各員注意するように」
 ただでさえ普段から日常的な行動が危なっかしいのだから、更に細心の注意を払わなくてはならなくなった。その元凶は現在笑顔で星の一つとなり輝いている。

「馬鹿が、無茶しやがって」
 金髪で技術者の馬鹿は薬剤も取り扱う要注意危険人物免許特急取得した正真正銘、真性の馬鹿だ。名前は出さない。プライバシー保護ぐらいはする優しさ、プライスレス。


「ライダー……え、ライダー!?」
「あぁ……その、ちょっとした悪戯というか手違い……でな」
 長身なのは変わらないが、いつも着ている黒いライダースーツの胸元を開けてタンクトップが覗いている理由は女性特有の膨らみの所為だ。ショートの髪は耳が隠れ、若干伸びている。すっきりした端正な顔立ちも肌のツヤが違っていた。

「なんか普通に美人だよね」
「まぁ、生活に支障は出ないから構わないが……オレが女のままだとスバルは困らないか?」
「う〜ん、困……るかなぁ? 私はライダーが好きだけど……男の人だから、なんて理由じゃないから……。うん!」
「スバルがいいなら別に構わないがな」
「私、ライダーだったら好きだよ。別に女の人でもソレはそれでいいかも」
「そうか、ありがとうスバル。そんなお前が好きだ」
「えへへ。でも色々大変じゃない?」
「あぁ。さっきトイレに行ったらファルドに全力で止められた。その上女子トイレに放り込まれて用を足したら説教された。シャワーを浴びようとしたら大浴場使用禁止まで言われたが、何故だろうな」
(ファルドさんも大変だなー)
 周囲の気配りやその辺りに無頓着なのは未だ人間としての生活に慣れていないからなのだが、一番苦労しているのは部隊で不祥事を起こさないようにするファルドだった。

「でもライダー、戦闘とか大丈夫なの?」
「問題ない。ソニックウインドさえ乗れれば戦闘行動に支障は無い。ただ……」
「ただ、どうかしたの?」
「胸が邪魔だ。窮屈で仕方ないから胸元を開けてるのだが、やけにチラチラ見られてな」
 その辺りを察して貰いたいのだが、スバルもそれは分からないようだ。この鈍感カップルに教育を施す教師は連日連夜胃薬の世話になることだろう。と、その時警報が鳴り響く。

「敵襲か、行くぞスバル!」
「うん!」




 ソニックウインドで空を駆ける。敵陣目がけ、アクセルを踏み込みギアを上げて加速。タンクに取り付けられたホルダーから二挺の銃を引き抜き、ハンドルをオートに切り替える。
 左右両手を広げながら、速射。撃ちだされる魔力の弾丸をばらまき、離脱する。十分に離れ急ターン、ハンドルを握り加速、加速、加速。

 前方を覆う魔力の障壁もろとも相手に衝突し、駆け抜けてブレーキを掛ける。置き去りにした衝撃の引き金に手を伸ばす。

「そこが貴様の終点(ゴール)だ」
 起爆させ、魔力が爆音と共に炸裂した。増援はなく、あれで最後だったらしい。



 部屋に戻ったライダーはシャワーを浴び、スッキリしたところでソニックウインドの整備に向かおうとしたが誰かが部屋のインターホンを鳴らしている。

「誰だ」
「ライダー、私だよ。今いいかな?」
「スバルか。別に構わない」
 部屋に入ったスバルが見たのはジーンズ一丁で半裸のライダー(女体で湯上がり)だった。首に巻いたタオルが丁度よく隠している。何なのかは察してくれ。

「ライダー、もうちょっと気をつけた方がいいよ!」
「な、なにをだ? なぜ怒るスバル!?」
 どうにもこうにも、人並みの生活に慣れさせるのはまだまだ時間が掛かりそうだ。

 余談だが、胸が邪魔な事を除いてライダーは女性の体を気に入っていたりする。尚、元通りになったのはそれから一週間後の事だった。



〜あとがき〜
ライダー性転換事件。しかし女でも違和感ないな。男だけど!

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