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Break S.Novel
東方蒼天騎

 あらすじ。ファルドが幻想入りした。説明は必要か?



「……、っ。ケルベロス」
《おはようございます。お目覚めの気分はどうでしょうか、主》
「最低で最悪な目覚めだ。何処だここ」
《該当データはありません。おそらく管理局の調査の手が届いていない次元世界でしょう》
 森の木に引っ掛かって自然のハンモックで寝ていたファルドが目を覚ます。正確には気絶していたのだが、寝心地はあまりよろしくなかった。

《十分注意して下さい》
「了解だ。……ハッ」
《どうかしましたか?》
 ひとまず木から降りたファルドは制服姿のまま、上着の埃を落としていて気付く。手を震わせ、冷や汗も流しながら血の気が引いていった。

「俺は……!」
《主、気を確かに》
 ファルドの健康状態をダイレクトに感知出来るケルベロスは血圧、心拍数上昇に伴う発汗作用で精神状態の乱れを感じとった。

《しっかりしてください。帰る手段ならば──》
「仕事が終わってない! 部隊の備品発注書のチェックに予算案の提出、報告書と航空戦技教導隊のミーティング、デルタの稼動記録に航海日誌がまだ残っていた。いや、それ以前に仕事が無ければ俺はこれからなにをやればいいんだ……!」
《すいません主。うるさいです、心配して損しました》
 ファルドが禁断症状を発してもケルベロスはクールに対処する。だてに片腕を務めてはいない、すぐに落ち着かせて状況整理を開始した。

「とりあえず、一度飛んで周囲を確認だ。建物があればベストだな、場所を尋ねる」
《そうして下さい》
「投げやりだなケルベロス、珍しく」
《仕事中毒者の主には参りました》
 木々の木漏れ日から抜け、青空に向かう。十分に高度を取るとそのまま姿勢を維持する。空戦では足場を犠牲に自由な機動が可能になるが、魔力制御を誤ればセルフ飛び降り自殺だ。
 空から見渡すと其処は、大自然の幻想風景が一面に描かれている。視界の中で息づく世界は、生きていた。
 風の運ぶ香りは青く。
 水の流れる音は清く。
 空の魅せる色は美しい。

「────」
 言葉を失う程に、この世界の魅力は威厳がある。誰にも汚せない彩り、物言わぬ不老長寿の大自然が放つ色彩は──繊細で、大胆に。或いは、残酷なまでに自然体だった。

「……綺麗だな。今まで見た事がない」
《記録しますか?》
「……あ──いいや、その必要はない。この景色は写真でも色褪せる」
 その瞳に、その肌に、その心にこの世界を焼き付けよう。網膜のフィルムに通して、心のシャッターを押して、自分だけのアルバムに閉じておきたい。


「もう少し見ておきたいが……今は誰かに話を聞くのが優先だ」

 ファルドはひとまず、一番近い建物に向かった。森の中に建てられた一軒の家は人を拒むように四方を木々に囲われている。立地条件はあまりよろしくないようだ、家主はさぞ根暗なんだろう。


「……霧……霧……霧あめ」
《きりさめ、です》
「……霧雨魔法支店」
《漢字はまだ苦手ですか?》
「あぁ、勉強しないとな……」
 一般的な漢字の読みならともかく、特殊な読み方をする漢字はまだ慣れていないらしい。

「すいません、誰かいますか」
 何回か扉を叩いてみる。だが、中からの返事は無い。何度か繰り返してみるが、留守のようだ。
 仕方なく思い、別な場所を訪ねてみようとしていたファルドの前に白黒の魔法使いが降りてくる。大荷物を抱えて、重そうにしていた。

「ん。私の家に何か用か?」


 ──コレが、ファルドと魔法使いの出会い。



 東方蒼天騎

青空の騎士は、その幻想に酔いしれ──ない。

「働きたいでござる」
《主が崩壊した!?》
「じゃあ本を死ぬまで借りて来てくれないか」
「任せろ!」
《任されないでください主!》

ぶっ壊れたワーカーホリックの就職活動。明日のお仕事なんでしょう。

説明は、必要だった──。

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