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Break S.Novel
青空に笑顔の花を

 青空に手をかざそうとして、左腕がないことに気付いた。指一本動かせない自分に涙する。
 右手には折れた剣を握りしめ、大地に全身を預けていた。
 脚は撃ち抜かれ、膝から感覚がない。
 腕は切り裂かれ、肘から感覚がない。
 満身創痍になりながらも敵は一人として見当たらない。
 まさに命懸けだった。死線を越えた戦いを一人、ファルドは制した。
 “不滅”の名に恥じぬ戦い。だがそんな事よりも青空が那由多の果てまで広がる光景に傷だらけの胸が救われる。
 ごほりと胃からせりあがる熱を吐き出した。呼吸すらままならない。
 震える右手を空へと伸ばす。
 遠く果てない、青空。掴み取れない程に高い空。
 それが、守れただろうか?
 黒煙をあげる大地に寝そべりながらファルドは思う。
 何の疑問もなかった、理由もいらなかった。ただ自分の信じる道を信じただけだ。

 視界が霞む。左目だけで見上げる空はぼやけていても青い。
 もう二度と見れないのか。そう思うだけで泣きそうになる。
 なのはの笑顔も、この青空も。
 重々しい目蓋に耐えられず、段々と視界は黒く闇へと染まっていく。
 暗闇の地獄に閉ざされてファルドは涙を流す。鼻をつく硝煙も、肌を焼く質量も、耳を叩く轟音も聞こえない。静かな地獄。
 そっ、と。頬に添えられる温もりがあった。優しくて、包み込むように愛でて、その手つきがファルドを起こす。

 眼を開けたそこには、不安そうな表情で顔を覗き込むなのはがいた。左腕も繋がっている。傷一つない身体に、ただ頬には涙の跡があった。

「……ファルドさん、大丈夫?」
「あぁ……。夢、か……」
 ソファーから体を起こすとファルドは目頭を押さえる。いつの間にか眠っていたようだ。

「……自分が死ぬ夢を見た」
「あ、そっ……そう、なんだ……」
「嫌な夢だ。まったく」
「ファルドさん」
「ん?」
 なのはの伸ばした手が頬の涙を拭う。手を取り、自分の頬に当てる。ファルドの手からは、確かに温もりがあった。

「一人じゃ、ないよ。私も、ヴィヴィオも皆もいる。だから、大丈夫」
「……ああ。そうだな、ありがとうなのは。お前にはいつも助けてもらってばかりだ」
「ふぁ!?」
 首に手を回して、なのはの身体を抱きしめる。感じる温もりを忘れまいと、強く抱きしめていたがやがてなのはもファルドの身体を抱き返した。

「……お前を一人になんかさせない。だから安心してくれ」
「うん……うん♪」
 笑顔を抱いて、ファルドも笑う。
 今、抱きしめている温もりを守る為に戦おう。青空と共に。

 笑顔を滅ぼす者がいるのなら、不滅の鬼となろう。
 この手を血に濡らしてでも、必ず守る。

 ──不滅の青空と共に、生きよう。
 それは二人の左手薬指にはめたリングに誓った言葉。





 〜あとがき〜

 なんとなしに筆を走らせた結果がこれだよ!
 幸せになれ〜幸せになれ〜。
 兎がそう簡単に恋愛成就させると思ったら大間違いさ!

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あきゅろす。
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