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Break S.Novel
明けない朝が来る

 自分の願いを叶える代わりに、少女達は戦う。
 インキュベーターと契約し、魔法少女となって魔女達と火花を散らす。命を賭けて、願いの代償として。

“ボクと契約して、魔法少女になってよ”
 インキュベーターは決まってそう語る。
 魔女達と戦う少女達のソウルジェムは徐々に穢れていく。いずれ魔女という絶望へと希望の光は変わる。無垢な願いを叶える少女達はそれを知らなかった。


 ただ今回ばかりは運が悪かったとインキュベーターは思う。感情を持ち合わせている訳ではなかったが、一抹の不安が脳裏を掠めた。

「な、なに……なんなの?」
 鹿目まどかの前に現れたのは一人の蒼い悪魔。恐らくは魔女以上に凶悪な存在とされる悪魔だ。

“キミは……”
 キュウべぇも驚いたような口振りで言葉を詰まらせている。
 魔女と戦っていた巴マミも、まどかと見守っていた美樹さやかもその圧倒的な能力に言葉を失っていた。

「悪いが“依頼”でな、グリーフシードは頂いていくぜ」
 背負う武器を豪快に振り回す。全身を使って周囲を凪ぎ払い、一掃した。身の丈を超える大剣を片手で扱う姿は人間ではない。肉厚で幅広いソレは、鋭利な盾にも見える。

 その暴力的な蒼い悪魔との出会いは、インキュベーター以上に世界を不安に揺るがした。

“キミならまどか程ではないけど、きっとワルプルギスの夜と戦える”
「他を当たれよ腹黒マスコット。俺は興味なんかねぇよ」
“なら何で魔女と戦っているんだい? やっている事が矛盾しているよ。魔法少女達を救うつもりなら諦めた方が”
「お門違いだインキュベーター。救う? 俺が? 笑わせんな。自分の願いで自滅していく連中を何で助ける必要があるってんだ」
 飽いていた。だから、悪魔は求めていたのだ。自らを満たす魔女の存在を。グリーフシードの収集はその副産物に過ぎない。

「一生のお願いって言うのはな、人生を捨てる願望だ。だから契約した奴等は例外なくその時点で死ぬ。違うか」
“キミの考え方は人間よりもボクたちインキュベーターに近い物があるね。一体何者なんだい?”
「お前が言うなよ。強いて言えば悪魔だ。お前によく似た、な」

 魔女との戦いにはふらりと現れ、協力する時もあれば敵対する時もあった。ソウルジェムが崩壊しそうなさやかにはグリーフシードを渡し、マミの死の直前には魔女を三枚に下ろす。救いながら、それでいて悪魔を名乗る。

「……貴方は一体」
「さぁな。別に邪魔なんかしねぇから好きにしろよ。まどかを助けたいんだろ? ワルプルギスの夜を超えたいんだろ? だったら簡単だ。俺と“契約”しろよ、暁美ほむら。二度も人生を捨てられるならよ」
 だが、決して履き違えてはならない。
 ──人でありながら悪魔の青年は、決して味方ではないのだ。



 魔法少女達の活躍の果てに夜が明ける。マミも、さやかも、杏子も、ほむらも、まどかもが安心した。誰一人欠ける事は無かった朝に感謝する。
 だが、朝日と共に現れたのは希望だけではなかった。

「お勤めご苦労、魔法少女諸君。だが残念な事に俺からプレゼントだ。受け取れよ、分厚い鉄塊でよけりゃあなぁ!」

 長い長い夜が明ける。

 そして、長い長い戦いが始まった。

 決して照らされる事のない心の闇を持つ、絶望の根源たる悪魔との果てしない争いが。



魔法少女まどか☆マギカ

〜明けない朝が来る〜



「俺の願いを叶えてみろよインキュベーター! 出来る物ならなぁ!」
“まどか。君だけが頼りだ! ボクと契約するんだ、早く!”

「わたし……!」



 ──白昼の闇に、世界が怯える




 〜あとがき〜

まどか☆マギカ終わったので何となく筆を走らせた結果、

どうしてこうなった!

違和感が最近仕事しないよ!

あ、マスターは主人公ですからね。一応言いますがラスボスじゃねぇから!

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