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ヴァルくろ!
全ての元凶
──日曜日の出来事を思い返すが、やはり問題無い。いや、待った。一つだけある。
両親からのお土産という名前の核爆弾、黒いPASSの存在だ。あの時はただのお土産だと思ってたんだがまさかこんな事になるとは思っちゃなかったぜ。何から何まで俺に悪意の無い迷惑掛けるのが好きだな、帰って来たら出来る限りの嫌がらせしてやる。手始めに目覚まし時計止めてやろう。

日曜日じゃないとなれば、月曜日の出来事だ。


──その日、俺はまたもや遅刻しそうになっていた。冗談ではなくマジで。黄泉の奴が裏切ったのだ。いや、目覚まし時計が鳴らなかったとかベタなオチじゃない。

「電池切れってどういうこったぁぁぁ!」
目覚まし時計を確認→まだ七時→後五分寝よう→但し遅刻まで残り五分。
という事が起きた。だが、腕のリングはホームルーム開始十分前に学園の改札機に通さないと自動的に警報を鳴らしてくれる。俺はそれで跳ね起きた。
突然学園の校歌が鳴ってベッドから落ちた所為で右肩痛い。朝食抜きでお腹痛い。酸欠で肺が痛い。

だが、俺は百メートル八秒で走るスプリンター。虎だ、今の俺は虎になるのだ!
チーターでも良い!

 曲がり角を曲がれば学園まで直線二百メートル、但し坂道。何の嫌がらせだこの学園は。
何か平然と欠伸しながら歩く蒼い髪の人を見たけど無視。俺にそんな余裕は無い。
そして、曲がり角に差し掛かった俺は人を刎ねた。いや、相手とぶつかっただけなんだがあまりにも小さくて向こうが転けた。ちなみに俺は全力疾走でフル回転していた足に鉄パイプ突っ込まれた自転車のようにすっ転んだ。

──やべえ遅刻する!?

そう思った俺は無我夢中でぶつかった子を見る。

「うぅ〜…イタタタ…」
「やべえ犯罪級に可愛い」
つい癖で思考がそのまま口に出てしまった。
 黒い髪のロングヘアー、幼さの残る顔立ちに無垢な瞳。少し細いかな、という肉付きに中学生並の低身長。だけども北桜学園の制服を着ている。手首のリングが赤いとかそんなもん気にする余裕もない。

「残り三分だと!? 正義の超人も真っ青じゃないか!」
俺は同じく遅刻寸前の少女を抱えて学園までの道のり二百メートルを突っ走る。
最悪授業に遅刻しても構わない。だからせめて改札機まで間に合ってくれ!

「えい」
「はい?」
 腕の中の少女の体に一瞬青い光みたいな物が見えた瞬間、俺の体が急に加速した。風を切って気付いたら下駄箱前で、俺は咄嗟に砂ぼこりを上げながら急ブレーキを掛ける。
今の俺、何かカッコいい。とかアホな事考える暇もない。

「大丈夫ですかおぜうさん! 超特急で最悪な乗り心地だったでしょうがとにかくぶつかってすいませんでした! 遅刻しなくて良かったです!」
「あのー」
「やべえ残り二分だと!?」
速やかにリングを通す。下駄箱で靴を履き替え、全力で階段を駆け上がり、教室の扉を開けてスライディングから滑らかなタッチダウンで席に着いた!

きーんこーんかーんこーん(繰り返し)

そして、俺は燃え尽きる。

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