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ヴァルくろ!
輝かしいはずの学園生活
 かくして始まった学園生活。初日から遅刻寸前のスタートダッシュによって肺に流れ込む朝の爽やかな空気が空洞の胃袋を鳴らす。
頼む。後生だ。黙ってろマジで、自分の消化器官相手にかなり本気でフラストレーションを抱きつつも走った、走った。転んだ。立ち上がって手首に付けた学園のリングに表示される電子時計を確認して更に俺は絶望する。

 こともあろうか寝ぼけていた俺の脳ミソは八時の表示と六時の表示を見間違えていたらしい。辺りを見渡せば、ジョギングしてるオッサンが足踏みして止まっている。すいません大丈夫です。お騒がせしました。一人で。
…口から火を吐けないかと十分くらい本気で悩んだ。

「…ふっ、静かで爽やかな朝だ」
クールに決めてみる。意味もなく。仕方ないのでコンビニでパンを買って学校で食おう。そう思って立ち寄ったコンビニに、似たような奴らが沢山いた。しかも全員転んだ跡がある。

(謀ったな!)
こんな調子では七時と九時を見間違えるのも時間の問題だ。登校時間なだけに。誰か座布団持って…こなくていいや。
 通学路を歩いてふと思った。こんな時間帯から学校が開いてる訳ないな、と思い手短な公園に立ち寄って朝飯を食べてから行く。
空にした袋と紙パックのジュースはゴミ箱にポイ、しばしの休憩を挟み再び足を向ける。いざゆかん本城の学舎へ。

 そんなアホみたいな爆裂スタートダッシュをかました初日。クラス割りで連続クラスメイト記録更新した俺は今年一年の平和を確信した。

「小学校六年、中学三年、そして新たな高校生活一年目。これで通算十年間の付き合いになっちまったな……」
「遂に二桁か…後二年、同じクラスだといいね、藍紅」
途中で合流した黄泉とクラス割りの張り紙を見て腕を交差させる。

「一年間よろしく頼むぜ相棒」
「こちらこそお手柔らかに」
青春しちゃってます俺達。

 北桜学園の下駄箱前には駅の改札機が置いてある。そこにリングをかざすと、登録されたデータを読み取ってドアが開く仕組み。ちなみにリング自体は装着者の微弱な生体電流で動くので外さない限り機能する。最先端技術様様だ。

──ここまで思い返して、俺は頭を抱える。何一つ問題無い。初日から爆裂スタートダッシュを切ったのは、もう笑って済ませよう。笑えよ。

 そんな平和は一ヶ月前の出来事。思えば普通だった。スポーツ大会で何か俺が英雄扱いされたのは割合。通学路がこんなに長いと感じるのも、何故だろう。
何故俺の平和な学園生活は一年目から崩壊している。何が原因だ。
もう少し後の方を思い出してみないとダメなのか。
そうなるとつい先週の出来事からになる。割と最近だ。

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あきゅろす。
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