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ヴァルくろ!
確認する友情
「まぁ知ってるのは顔と名前だけなんだけど」
「案外役に立たないなお前…」
「何も知らない藍紅に言われたくないなぁ」
 俺はそれ以外の事で手一杯だからいいんだ、つーかほっとけ。
とか言ってたら向こうは先輩同士で戦争勃発してる。マスター先輩めっちゃヘラヘラした笑い浮かべて怖いんですが。

「あー、思い出した。剣道部の奴にちょっかい出してたから「寄ってたかってハエみたいな柔道部だな」って言ったっけ。そしたらアイツ等滅茶苦茶怒りやがんのな、当然ぶん投げてやった」
(おふぁ、この人普通じゃねぇ!?)
その、その柔道部の部長が目の前にいるのにそういう事言っちゃうのか。無謀にも程がある。だけどあちらもさすがに校内で問題起こしたくないのか堪えていた。偉いなぁ、顔真っ赤だけど。

「で、何部でしたっけ先輩?」
 ダイナマイトに着火するような爆弾発言にとうとう柔道部の部長がキレた。襟と胸ぐらを掴んでそのまま足を掛けて綺麗な一本背負い投げ。
畳ではなく廊下に背中から落ちればさすがに無事では済まない。為す術もなく背中から叩きつけ──られなかった。

「ふんっ!」
 マスター先輩は、爪先だけで体を支える。部長の襟を掴み、腕だけで地面に倒した。仰向けの体制で、それも片腕だけで引き倒したのだ。何というか、イカれてる。

「おらぁ!」
「うわ、容赦ねー…」
しかも殴った挙げ句腹に蹴り入れていた。当然痛がる部長。その胸ぐらを掴み上げて形容しがたい笑みを浮かべている。

「オーケー部長さん、話し合おうじゃねぇか。主に暴力言語でなぁ…!」
(そんなんで会話したくねぇぇ!)
言葉のデッドボールとか絶対御免蒙る。マスター先輩は部長を引きずりながら廊下を去って行った。
 あんな人に呼び出されて、果たして俺は五体満足で帰れるのだろうか。あぁ、不安だ。ただでさえ不安因子があるというのに。

「欝だ。死にたい…死ねば楽になれるのに」
「葬儀代で遺族は楽じゃないよ」
「黄泉、時々お前が本当に嫌な奴に思えるんだが気のせいか?」
「ホントの事を言ってるだけだよ、藍紅」
「……俺達、友達だよな?」
「もちろんだとも?」
「疑問符いらねぇよ!」
チクショウ、黄泉の考えている事が全く分からん。いや、何かあんまり分かりたくない。俺は分かりやすい人間でいよう、シンプルイズベストだ。

「実は呼び出しくらった、あの先輩に」
「それは大変だね」
「お前含めてな」
「…藍紅、僕達は友達だろう?」
「ははは、当然じゃないか?」
「…………」
「…………」

沈黙。

「藍紅、君の気持ちが良く分かった。確かに殺意が湧くね」
「だろう、黄泉?」

きーんこーん、以下略。チャイムが鳴り響いた。プリントは昼休みにでも全力で終わらせよう、そしたら提出してくれば良い。

「ところで死にたいらしいね」
「うぉぉい!? 今その話題を出すかお前は!」
「ほら、五月だし」
「俺の人生は希望で満ち溢れてるよ!」
主に崩壊前提のだけどな。

…ヤバい、泣きたい。

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あきゅろす。
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