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リリカルなのは-Beautiful Fantasy-
策謀交錯──U
 テーブルを蹴り上げてデバイスを起動させる。椅子を蹴飛ばし、爪を避けながらの早撃ちは眉間を正確に撃ち抜いていた。だがそれで致命傷かも分からないので念のため二発撃ちこむと完全に息絶えたのか、黒い霧となって消滅する。

「ふむん、我ながらナイス」
「ったくこの店は活きがいいな。料理がテーブル吹っ飛ばして飛んできやがった」
 この非常時に無銭飲食、かと思いきやしっかり代金をレジのそばに置いて食事を済ませた二人は店を後にして更衣室へと向かった。

「これからどうすんのさ」
「二人じゃなぁ」
 ため息しか出てこない。ここから離れた先の空港はホテルの屋上から確認したが避難した人々で埋まっている。そして街中は化け物の群れ。唯一海岸に残った二人だけが取り残されている。

「足もねぇし、参ったなこりゃ」
 ファングはおどけた調子で肩をすくめた。打つ手なし。ギルもヴィオレットもここ最近は連絡が取れないまま。孤立無援の二人だった。
 何気なく黒い穴を見ていると、触手が伸びている。その数は八本。
 ずるり……と体表の粘液が粘つくような音が見ているだけで聞こえてきそうな化け物が出てきた。

「煮ても焼いても食いたくねぇようなのが出てきたな」
「まずそうやねー、大味で」
 巨大な蛸が海面に叩きつけられると巨大な水柱が上がり、津波が二人の足元まで流れてくる。立てられたままのビーチパラソルもトロピカルジュースもなにもかも流されていった。
 手持ちのデバイスでは心許ない相手だ。逃げるが勝ちだろう。二人がそのまま走ろうとして、乗り捨てられたバイクを見つけた。まだ使えそうではあるがガソリンがほとんど入っていなかったので蹴り飛ばす。
 大蛸はすでに浅瀬まで来ていた。黄色い目が二人の姿を捉え、触手を伸ばしてビルを簡単に引き千切り、瓦礫の山へと化す。

「踊り食いとかどうよ」
「絶対に腹壊すから却下だ」
 その窮地にありながら二人には余裕すら見られた。状況を打破する手段はまだ見つかっていない。
 大蛸が脚を振り上げる、それを撃ち抜く桜色の砲撃と金色の刃。丸々とした頭には爆炎が叩き込まれて苦悶の悲鳴を挙げていた。臨戦体勢を整えていた二人には突然の事態に見守るしか出来なかったが、傍に降りてきた顔見知りに声を掛けられて身体が動く。

「やぁっぱりここにいた! 見つけたよ2人とも」
「よ、ヴィオレット」
「へーい、ルークちゃん。相変わらずかわゆすなぁ」
 ブラッドの鼻っ柱に肘鉄が打ち込まれた。市街地の方にはスバル達が向かい、救助に手を貸している。

「管理局と手を組んだってとこか?」
「あー……まぁ事情が色々あって……その辺の説明もするから一緒に来てくれる?」
「……ギルのオジサンも一緒」
「ほぉん……?」
 それを聞いてファングは笑った。企んでいる笑みだったがそれをヴィオレットが気にした様子はない。

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あきゅろす。
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