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リリカルなのは-Beautiful Fantasy-
夜天の星空──W
「じゃー約束通り協力してくれる?」
「えぇぇぇ…………」
「おいィ? 約束違くないか!?」
「いや、だってさぁ」
 ここに来てまだミズキは駄々をこねる。しかし約束は約束、トウハと同じように民間協力者として扱う事になる。

「……なぁトウハ、一つ聞いてもいいか?」
「はい、なんですか?」
「クルヴィスとお前ってどっちが、その……拳法? 強いんだ?」
「……命に別状がない程度に本気を出していいなら」
「やっぱいい」
 さらりと恐ろしい事を言う。クルヴィスも相手する事は避けたかったようだ。トウハとミズキが去った後にヴィータがその理由を尋ねる。

「なんと言いますか、彼の場合と俺の場合は相手の基準が違うような気がしてならねーんで」
「どーいうことだよ?」
「ありゃバケモン退治専門、人間相手にやるようなのじゃねーですよ」
「?」
 首を傾げるヴィータにクルヴィスはそそくさとトレーニングルームを後にした。



 ──徐々に覚醒する意識に、ファルドは自分が寝かされている事を把握するのに数秒。遅い立ち上がりにケルベロスも遅れて起床した。

《Good Morning.My Master》
「………………ああ」
 上体を起こす。メディカルチェックはケルベロスが行った所深刻なダメージが残っているらしい。全身が油を切らした機械のように痛むのはその所為か。

「ファルド一佐、お目覚めですか?」
「悪いな、すっかり寝込んでたみたいで。すぐ業務に戻る」

 ──育ての親を亡くした。
 ──恩師を、亡くした。
 それでも今は立ち止まれない。制服に袖を通す。医務室を出ようとしたところでクルヴィスと鉢合わせした。

「おや、おはようございますファルド一佐。本局に到着まで残り半日もありませんよ。それと通常業務の方は俺が代理で行いましたので記入漏れがないかチェックしてください、問題なければ委任証含めて俺の方に」
「ああ、分かった。助かる」
「なぁに、お安い御用ですよ。戦闘で尽力出来ない以上は俺に出来るのはこれくらいですからね」
 つい先程ランク差などお構いなしに叩き伏せておいて良く言うものだ。それを隠し、誰もが“平平凡凡の三等陸佐”と錯覚する。だが本当に恐ろしいのは柳クルヴィス自身が持つ体術だ。達人でもない、玄人でもない、だが素人とは程遠いその腕は呼吸をするような自然体で牙を剥く。
 これが陸戦魔導師ランクAA、幻術魔法“のみ”を極めた地上のトリックスター。情報査察課隊長の男だ。

「それと……」
「どうした?」
「本局に戻ったら、調べ物がありますので俺はまた一時的に離脱します」
「そうか、分かった」
「地上の業務ほったらかしにして、こっちに持ってきて片付けるぐらい切羽詰まってるんですよははは」
「いや、それは笑いごとじゃない」


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あきゅろす。
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