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リリカルなのは-Beautiful Fantasy-
残されたもの──X



 ──クレイモアらしき組織の動きが確認された。その報告を本局から緊急の指令として受け取ったファルドはデルタの進路を第二十八管理内世界リステイドへと向ける。
 それに複雑な心境を抱くのは、他でもないなのはとファルドだ。あの場所には特に目立った古代遺物など無かったというのに。

(……なにが目的だ?)
 まさか陽動か? とも思ったが、本局からの指令では断るわけにもいかない。

 そして、到着から間もなくして映る光景は奇妙な戦場だった。
 いつぞやのデバイスが三体、それに青年が二人。相手は成人男性一人に同じような人型デバイスが一体。そのどちらともいえない立場のが一人。つくづく面倒な戦闘と縁がある物だ。毒づいたところで始まらない──



 ウォルフ・フェニックス。並びにブルーバード、そして元・管理局であったクレイモア団員は一隻の新造艦を前に整列していた。

「……本当に、いいのか」
「あー好きにしな。そいつ等がいたんじゃ俺んとこも殺気だって仕方ねぇんでなぁ」
 グレイが横目に見るのは今すぐにでも単騎突入して蹴散らしそうなルードの姿。笑ってはぐらかす。

「せいぜい、活躍するこったな、不死鳥。エース・オブ・フェニックス」
「そうさせてもらう、大罪人。総員傾聴!」
 造船ドックに響き渡る声量はその肉体のどこから湧きあがるのか、威厳に満ちた老練の言葉を直立不動なままに耳を傾ける。一言一句、聞き逃さない魂胆で。

「これよりオレの指揮下によって動く者は管理局へと弓引く行為に違いは無い! 敵は機動武装隊、不滅のエースが率いる管理局本局次元航行隊屈指の戦力だ! 生きて帰る保証はない、野良犬同然でも生き延びたいと言う者は引き止めはせん! クレイモアの傘下へと尻尾を巻いて戻るがいい!」
 ……その言葉に、逃げようとする者は誰一人いなかった。孤高の決意と、かつて歴史に名を刻んだ不死鳥と共に戦う事を誇りに思う。自分達は、管理局に捨てられた者達だ。そんな自分達に天は最後の恵みをもたらしてくれた。

「……ならば、よし! 我らが散り逝く場所へ棺桶を用意してくれた、世紀の犯罪組織クレイモア。並びに未曽有の大罪人グレイ・ヴァン・デューメントへ最大限の敬意を払い──総員、敬礼ッ!!」
 ザッ──、一糸乱れぬ統率。踵を合わせ、敬礼を向けるまでの僅か数秒間。それは圧巻と言う以外に向ける言葉がなかった。

「へっ、大馬鹿野郎が。何処に行っても歳食った爺ぃ婆ぁは頭が固くて仕方ねぇ。そうもされたんじゃこっちも野良犬なりの敬意を示さねぇとなぁ? おい、野郎共! 自分から死に急ぐ前代未聞の正義の味方に、総員敬礼! 見よう見真似で上っ面だけの誠意を見せつけろ!」
「──……その心意気に重ねて最大限の感謝を! 乗船! 配置に着け、出港だ!」

 不沈艦、それはかつて己と共に沈むはずだったかつての帰るべき家──デルタ。
 その模倣品として造り上げられた不死鳥の棺桶《ルシフェル》が、翼を広げて曇天を越えて飛び立つ。

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