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リリカルなのは-Beautiful Fantasy-
天空を制する者─W

「ケルベロォォォス!」
《ZERO DRIVE!!》
 ──誰がそれを使おうと、所有しようと言うのか。絶大な性能と反したハイリスクハイリターンの能力に死の可能性が付き纏うデバイスを。
 それをファルドは選択した。生涯の愛機にすると、戦場の相方にすると。

 ──そうでもしなければ、何も出来なかった。

 集束魔法の魔力の喰らい合いは、ファルドに軍配が上がる。相手の魔力をそっくりそのまま上乗せした一撃はウォルフを確かに直撃した。
 その代償に、多少反動で左腕がガタついたが“たかがこの程度”だ。

「──なるほど、確かに。恐ろしい性能だ」
「……くっそ」
 歯噛みする。高度の優劣が、既に勝敗を喫していた。ファルドの眼前にはやはり敗北が突き付けられる。何の事はない砲撃に打ち倒されて、空から落ちていく。
 今度はそれを救う者はいない。ロアもまた鳥かごに押し込められて撃墜されていた。

(──さて、リヴァル達は……)
 大丈夫だろうか。
 降りようとして、胸を締めあげる苦痛に口を押さえる。

「……やはり、オレも歳だな」
 立て続けにフルドライブを使用し、体に負担を掛け過ぎた。その手に吐き出した血を握りしめる。
 これ以上の戦闘は無用と判断してウォルフがブルーバードと共にアザゼルの甲板に着陸した。見ればツァラストゥラには亀裂が走っている事に少しだけ驚く。

「二人掛かりでようやく一撃か……」
 この程度で称賛するほど甘やかす気は欠片もない。自分の実力を評価するのは相手を撃墜してからだ。たかが一撃、死力を尽くして与えたところで何だと言うのか。それでは意味がない、現に全員撃墜されて戦力も残っていなかった。
 活路を見出すならば、もう少し上手くやればいいものを──ウォルフは落胆する。

(いや、こうしてしまったのはオレであったか……監督の教導不足の結果だな)
「ウォルフさん。貴方はこれから……」
「下の様子を見てくる。世話になった借りもあるからな」
 シルフィが怪訝な表情を見せた。が、それは念話に対しての反応でウォルフを呼び止める。

「どうした」
「……グレイが、撤退する、と」
「なに?」



『グレイ、それはどういう意味だ』
『言葉通りだ、これ以上付き合いきれねぇんだよレグナの野郎にはなぁ』
 案の定な返事にグレイはうんざりとした口調で返した。
 アトランティスの戦場は三つ巴に入り混じった争いへと発展している。神殿の階段に座り込んでいるファング、ブラッド、レイヴンは傍観者を決め込んで動かない。ヴィオレットも陸戦ではほとんど無力でルーク同様に一般人の保護作業中だ。

 そして、エアとミズキの二人は現在グレイの相手をしている。

「邪魔ぁすんじゃねぇぞ」
「ッ──」
 アンチブラッド側ではダルガとルードが交戦中だ。

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