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リリカルなのは-Beautiful Fantasy-
不死鳥の遺産─U
 挑発に乗ることなくなのはがレイジングハートを向けて《アクセルシューター》を放つ、それをちらりと見ただけでストリーグは鼻で笑った。明らかな蔑みの色を込めて。

「ハウンド、飛ばしてくぞ!」
《Super Cruise》
 デバイスの先端を後方に向け、魔力を推進力とした超音速巡航機動。僅か数秒ながらシルフィに追いついた副隊長、後続の三名もそれぞれ標的を決めて動き始めた。

 それを見ていたアザゼル管制塔で待機を命じられたアークはモニターに映る騎士の姿に眩暈を覚える。

「ジャグ、俺も出る」
「そうですか。残念ながら私はここで待機するしかないようですねぇ?」
「すまないな」

 ファルドはシルフィを、ロアはストリーグを相手にするが全くと言ってもいいほどに成果は出ない。回避と追跡、そして攻撃を同時にこなすのは困難の極みだ。ケルベロスを向ける手がどうしても震えてしまう。

「────ッ!」
 歯を食い縛る、ドッグファイトはアグレッサーの独壇場だ。アレに追いついた覚えはないし、攻撃を当てた覚えもない。

『この馬鹿者が! なんだその弱腰は! 撃てぬならさっさと下がれ、味方の邪魔だ!』
『シルフィ特務少佐……! 何故貴方がクレイモアに加担する!』
『戦場で敵に言葉を投げかける余裕があるなら、弾の一発くらい撃ってみろ!』
 加速の勢いのままに反転、背面飛行しながら正面から放たれる高速直射魔法。防がず、避けて撃ち返す。シルフィは背中を地面に向けたまま旋回を始め、ファルドの横を通り過ぎる。
 一切減速しない機動に遅れて追跡しようとして、悪寒が走り抜けてファルドは逆方向に旋回した。

『ほう、ヒヨッコ。まだ覚えていたか』
 死角に回り込んだ相手の、死角に潜り込むシルフィお得意の『ロービジビリティファイア』はどうやらまだ現役だったようだ。

「よう若造、俺に追いつけるかぁ!」
「ったりめぇだぁ!」
 ロアもストリーグの後ろに着いている。旋回、急転換、急上昇を繰り返す。やがて垂直に《Super Cruise》で上昇を開始、ロアも追う。だが加速力は一枚上手か、その距離が縮まっていく。

「追いつ──」
 引き絞った拳。だが眼前に突き付けられるのは──“相手と目が合った”──前を向いているはずのストリーグと。
 そして僅かに体をずらした隙間から瞳に焼きつく太陽の輝きに、ロアの動きが鈍った。
 徐々に減速した状態からスカイハウンドを支点としたバレルロールダイブ、ストリーグの得意とする『インメルマンダイバー』にまんまと出し抜かれる。

「蝋燭の羽が生えているわけでもあるまいな、若造!」
 高速直射《RAPID FIRE》の連射に加えて、高速誘導制御弾《HORNET FLARE》を四発まともに直撃したロアの体が魔力の爆発から落ちてくる。だがその背中にストリーグのスカイハウンドは狙いを定めていた。

「駄目押しだ、遠慮せず持ってけ!」
《HORNET FLARE》
 更に四発、見向きもしないまま離脱と同時にストリーグはなのは達と交戦を続ける仲間の援護へと向かう。


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