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リリカルなのは-Beautiful Fantasy-
大罪人──V



「……終わったか?」
 ふてぶてしい態度のまま一部始終を見ていたルードに、グレイは片手を挙げて答えた。

「まぁな、一時休戦だ。行くぞ」
 レグナを引き連れて到着したのは遺跡の最深部、道中の防衛システムは全て沈黙している。
 目的の情報端末機のそばに、アークがいた。凛もいる。グングニルを構え、ロストロギアに突き付けていた。

「おいアーク、なぁにしてやがんだ」
「グレイ……」
「レグナは敵じゃあねぇ。大体テメエが勝手にやった事だろうがよ、分かったらデバイス解除しな」
 それでも、引き下がらない。

「取り引きしてんだ。そいつを“上”に引き渡す前に、俺達のとこでレグナに譲るってよぉ」
「なっ……バカかグレイ!」
「管理局にぞろぞろとバカ野郎を引き連れて喧嘩売ってる団長様に向かってバカはねぇだろうがよぉ、アーク」
「ッ……!」
「分かったらデバイス解除しろ。でなけりゃ俺の手で不始末を片付けないといけねぇし、そりゃあ面倒だろう?」
 ようやくアークがグングニルを下げ──るかに見えた。改めて突きつけ、レグナに視線を向ける。

「グレイ、これは別にそこまで価値がないんだろう? 『クレイモア』にとって」
「そりゃあまぁな、上の連中に頼まれたってだけだからよ」
「ならレグナ。聞いたな、俺個人と取り引きをしよう」
「…………」
「彼女を……天風凛を、引き渡してはくれないか」
 何かと思えば女かよ。グレイはげんなりした表情でレグナの顔色を伺う。

「どうすんだぁ、色男。ありゃ本気みてぇだぜ?」
「団員の不始末は貴様が処理するんじゃないのか」
「どうするかは俺次第だ。今はテメエの判断に任す」
「そうか……」
 それきり黙る。何を考えているのかは分からない。ただ、アークがレグナに処理された場合はグレイもルードも休戦する理由がなくなる。

「アーク・セヴルだったか……」
「……」
「そこまで言うのなら、彼女を二度と離すな。それを守れないというのならクレイモアもろともお前を始末する」
 半ば脅迫に近い交渉だったが、レグナは気にも留めていなかった。

「あの、レグナさん」
「なんだ」
 グレイが封印作業を済ませる後ろで凛は尋ねる。

「心配するな。俺と旅を続けるより、あの男の傍にいた方がいい。管理局に追われる事に変わりはないが、そちらの方がお前の為になる」
「はい……」

「おいグレイ、もう少し丁寧に扱えないのかこれ」
「るせぇぞぉアーク、んなもん知ったこっちゃあねぇし大体テメエの所為で厄介な事になったんじゃねぇかよ」
「……ややこしくしたのはグレイだがな」
「テメエ等、後でしばく」

 ファフナに戻った時、レグナの姿を確認したクレイモア団員一同は死ぬ様な心地であった。

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