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リリカルなのは-Beautiful Fantasy-
大罪人──U
 視覚出来ない圧力が一気に増した。グレイの表情からも笑みが消え失せる。
 ティターニアは謂わば完璧な贋作だ。レグナの真価は右手のデバイスにある。

「やぁっと本気か、手間ぁ取らせんな。デュラハン」
《YES.》
「狩るぜ」
《Understanding》
 バッジを外す。右手の中で起動したデバイスは大剣。真っ赤な血に濡れた赤い剣を担ぎ上げ、放り投げた。
 レグナのデバイスが触れる寸前に、左手で掴み死角からの後ろ回し蹴り。躱される。続けて踏み出した。

 互いのデバイスが触れ合う事はない。一瞬の交錯の中で軌跡を計算して徹底的に衝突を避けたにも関わらず二人の服が徐々に裂けてくる。切っ先から生み出される真空の刃が綻びを生んでいた。

「……ッ」
 グレイ自身、これが二度目の遭遇で無かったらルード達同様に苦戦している。無理もない。
 念頭に置いているのは『絶対にデバイスに触れさせない事、触れない事』だ。

 グレンデルとデュラハンは触れないまま、埓が開かないと判断したのかレグナは剣を引く。交戦を停止するのではなく、突きの構え。

「……ちッ」
 グレイが目に見えて不利な状況を悟った。避けようが防ごうが自分に敗北が傾く。
 さすがに命には替えられない、デュラハンを盾として構える姿にレグナはやはり、容赦しなかった。
 だがそれはフェイク。

(何っ……!)
 レグナは腕を伸ばし、グレンデルを突き出している。対するグレイ。身体を右回りに回転させ、横に寝かせたデュラハンで軸の安定を計りながら下に潜り込んだ。
 同じ得物を扱うのだから、不利を知っていて当然。加えてグレイは嫌という程それを理解している。

(ああ、くそったれめぇ!)
 再びレグナの身体が突き飛ばされた。息を切らして全身の冷や汗に肝が震える。武者震い半分、恐怖半分といったところだ。

「やっぱよぉ……テメエの相手はゾッとしねぇな」
「……そうか」
「“勝てる気がしねぇ”ってのは、テメエが初めてだ」
 グレイはデュラハンを待機形態に戻す。両手をポケットに突っ込み、やれやれと息を吐き出した。
 後一歩だったろう勝利は、一気に敗北へと色を変えている。

 右手にグレンデル。左手にティターニア。その漆黒の龍が比翼を並べて三つ顎で睨んでいる。
 いつの間に、というのは理解出来ない。レグナ・デスティニーのデバイスはその不可能すら問題なく機能させる。

「ったくよー、どんな手品だ」
「……デバイス単機による遠隔操作、と言えば理解するな」
「そんなデカブツでやられたら参っちまうなぁ……」
「これ以上の邪魔をするな」
「そんぐれぇは分かってる」
 ピッ、と人差し指を立ててグレイはレグナを止めた。

「だから、ここは一つ互いの為に取り引きといこうじゃあねぇかよ」
「……ふん」

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あきゅろす。
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