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リリカルなのは-Beautiful Fantasy-
十ページ
「ったく、なっちゃねぇな」
 右手の篭手型アームドデバイスから使用済みカートリッジ三発を排夾、新しく装填する。簡易式とはいえその威力は侮れない。

(さぁて、と……出来るだけ長くねぇ)
 時計を確認する。管理局に追い回されること十分、もう少しといったところだ。

「このまま逃亡劇ってのは、難しそうだ。そう思わねぇか、隊長さんよ」
「いやぁまったくだぁよ。ならおとなしく捕まろうか」
「お断りだ」
 クルヴィスの率いる小隊がファングと接触、戦闘が開始されるその傍らで通信の途絶えた局員の救助作業も並行して行われる。
 もう少し、と欲を張りたいが流石に身の保証が取れない。

「驚いた。スタントマンが天職だと思うけどねぇ」
「悪いが作り物のアクションにゃ満足出来ねえんで」
 増援含み、十数名の局員が倒れていた。数を減らしたところでファングは再び逃亡を再開する。

「ブラッド、聞こえるか」
『あいよー』
「目標地点まで突っ走る。後は手筈通りだ」
『了ー解っ』
 右手のデバイスで連絡を取り合いながら車のボンネットで滑りながら道路を横断し、ビルの間を抜けた先でギルと合流した。

「おうファング」
「逃げるぞオッサン」
「はぁ? どうやってだ」
「いいから付いてこい!」
「へーいへ、若いってのはいいなぁまったくよ……」

「鬼ごっこは終わり、たった二人にここまで引っ掻き回されちゃたまらないんでね」
 しかし、そこで完全に包囲されて身動きを封じられる。思った以上に管理局の対応は速い。

「……見えるか?」
「なにが」
 クルヴィスは首をかしげたが、どうやら右手のデバイスに語り掛けているようだ。他に仲間が居るのだろう。

「いいや? こっちの話だ」
「……ま、なんでもいい。確保──」
 命じる瞬間、乾いた音と共に左肩へ激痛が走った。

(スナイパー……!? くそっ)
 その、僅かな指揮の乱れに乗じる煙幕と季節外れの雪。通信障害を引き起こすECMだが、魔力による念話に効果はないはずだ。

「クルヴィス三佐!」
「大丈夫、かすり傷だ! それより犯人は」
「逃亡を再開しました。追跡します」
 デバイスの機能不全で狼狽え、その隙に二人は行方を眩ませる。
 手際の良さにクルヴィスは冷や汗を拭いながら歯噛みした。

「くっそ……プロのテロリストなんか洒落にもなってないってのに……!」
「誰か、手を貸してくれ!」
 副隊長の肩を借りながら狙撃手の位置を探る。自分の立ち位置と傷口から導く場所は、高層ビルの屋上。しかし、クラナガンに列挙するビルの中でもほんの一握りのそこは、呆然とするしかなかった。

「冗談じゃねぇやい……あの隙間通して狙ったってか……」
 それは、ある種の神業とも言える腕が可能とする狙撃で、魔力反応のない質量兵器による物で行われた。クルヴィスは目眩すら感じている。


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あきゅろす。
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