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良司と女神のトリセツ
H
翌朝、俺は香ばしい香りで目を覚ました。
寝室を出ると、何と美音が台所に立っていた。
「何やってんの!?」
「朝飯を作ってるんだ」
「何で?」
「気が向いたからだ!べ、別にお前が労ってほしいって言ってたからとかじゃないからな!」
美音がツンデレチックナ喋り方をしたのがおかしくて笑ってしまった俺だが、絆が太くなったと感じたのが気のせいじゃなかったのを確信できたのは嬉しいかった。
俺は、普段料理をしない美音の腕がどんなもんか気にしながら着替えを済ませて居間に戻ると、テーブルには卵焼きと明太子とご飯が並んでいた。香ばしい匂いは卵焼きのそれだったらしい。
一口食べてみた。
「お、美味い!」
「ホントか?始めて卵焼きを焼いたんだが、変じゃないか?」
「始めてでこの完成度は天才的だな。俺好みの甘めだし。」
美音は嬉しそうにニッコリと笑った。
朝食を食べ終えた後、いつもの通り支度を済ませてヒロが来るまでニュースを見ていると、インターホンが鳴った。玄関の戸を開けると、そこには麻紀が立っていた。
「前崎君と石丸君には先に行ってもらったから、今日はあの二人来ないよ。」
「?…んじゃ、一人で行くか…」
「私を無視しないでよ!昨日の事とか謝りたいの…」
そう言った麻紀は、申し訳なさ気にな顔をしていて断る理由も勇気も持ち合わせない俺は二人で登校することになった。
「昨日は美音さんに説教したり、良司に嫌み言ったりしてゴメン…」
「あぁ…気にしなくて良いよ…」
気まずい空気が流れる。
「…そうだ!今日は転校生が来るらしいよ。」
自分で作った空気に堪えられなくなったのであろう。麻紀は話題を変えてきた。
「ほ〜、しかし転校には若干時期がズレてるな。」
「家庭の事情とからしいよ。」
クラス委員長をやっている麻紀は、こういうネタを仕入れるのは早い。それにしても、詳しすぎる気もする。
幼なじみとはいえ、普段は余り二人きりで居ない組み合わせということもあり、話が弾んでしまった結果学校に着いたのはホームルームの直前だった。
そして、ホームルームが始まると俺は仰天した。
なんと、転校生は椎名だったのだ。
椎名は俺の隣の席に座り、昨日のような意味深な笑顔で挨拶してきた。
「やぁ…また会ったね。」
昨日の妙な初対面のせいで、こいつは信用できない部類に入っていた。
「お前、ただの転校生じゃないだろう…」
その質問にフッと鼻で笑った椎名は、またも意味深に返してきた。
「近いうちに分かるよ。」

そう、俺は近いうちにこいつの正体を知ることになる。
そして美音の秘密も…

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