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良司と女神のトリセツ
手作りの味
親父さん(店長)が着替えてきたので、一緒に食事をすることになると思ったら、町内会の忘年会があるとかで直ぐに出ていってしまった。
親父さんは祭好きな性格で、寄合やイベントがあると全力で参加するのだが、今回も隠し芸的な意味合いで落語(まんじゅうこわい)をやるらしい。
素人がそんなことできるわけないと思った人もいるだろうが、なんでも、一年かけて完璧にしたらしく、意気揚々と出掛けて行った。
そして、食卓に着くのは俺と麻紀だけとなった。
独り暮らしをしているときは、よく二人で夕飯を食べたりもしていたが、それも数ヵ月以来の事で、更に麻紀の家でとなると何年ぶりになってしまうぐらい久しぶりの事なので多少緊張してしまう。
それに加え、何故か何かに後ろめたさを感じているせいで若干気まずい。
頭の中をちょっとぐるぐるさせながら食卓についたところで、俺はようやく皿の上のハンバーグに違和感を覚えた。
「丸くないハンバーグを初めて見たんだが…」
「ん?あぁ、なんとなくハート型にしてみたヨ☆」
「だから、ヨ☆じゃねぇよ」
「因に、いきなり真っ二つに割ろうなんて考えてないよね?」
「流石にそんなことしねぇって」ちょっとだけやりたくなったが、機嫌を損ねそうなので止めた。
「うん、よしよし。それじゃあ、いただきます」
「いたたきます」
丸みを帯びたハートの端を一口大に割り、ソースと絡めて口に含んで良く噛。
レストランなんかの飾った感じじゃなく、家庭的で温かい味がする。思わずホッとするような味だ。
しかし、麻紀は不安そうにチラチラとこっちを見ている。
「どうかな?」
「旨いよ。何かホッとする」
「良かったぁ」
「今更、何不安がってんだよ」
「だって、良司は料理出来るから、口に会うか不安なんだよ」
なんだ、こいつ、そんなこと考えてたのか。
まぁ、料理とかお菓子とか自分で作れるから、ダメなところとか指摘されそうって理由で、作ってやりたくないと言われたことはあるが…。
例え、作られた料理が口に合わなくても、出されたものは全部食べるってのが相手に対する礼儀だし、改善点が有るなら、美味しくなるまでトコトン付き合うって気持ちもあるんだが。
「心配すんな、お前の料理は間違いなく旨いよ」
そんな、俺の言葉を聞いてちょっと照れながら笑った麻紀は。
かなり可愛かった。

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