TimeKnight 刺さる針の行方 「私は、生きてるの?」 葵はジークスに聞いた。 こんな大きな針が刺さったのにも関わらず、血が出ない、痛みが無いなんて可笑しすぎる。 取りあえず、生死の恐怖を絶つ為に聞いた。 「はい、葵様は死んでおられません。」 ジークスは笑顔で答えた。「そう・・よかった・・。」 安心したのか、葵は一息付いた。 少々冷静になり、辺りを見渡した。 どうやら場所も変わってないらしい。 上には、元凶と見られる時計が、なぜか28時を指していた。 こんな時間帯は有り得ないのに、何故か納得してしまう自分がいた。 「改めまして、初めまして葵様。」 目の前の男は、再び挨拶に戻った。 「様を付けるの止めて。」まだ数回しか使われてない様付けは、彼女にとっては疎ましかったみたいだ。 「では、これからなんと呼べば?」 返すようにジークスは聞いた。考えるのが面倒になった葵は、 「他の名前だったら、好きに呼んで良いわ。」 と答えた。 それを聞いたジークスは、少し考えた。 「なら・・葵様で。」 ジークスは、真面目に言っている様だった。笑顔で言うジークスに、葵は溜め息一つ。 もう、どうでも良くなったようだ。 そんな彼女は、奇妙な事に気付いた。余りに静か、空間が無駄に広がっていた。きっと、これが本当の静寂と言うのだろうと、軽く悟っていた。 ただ一番邪魔なのは、胸にある大きな針。 抜きたいが、後々面倒になる気がしたり、抜いた瞬間に血が噴き出るんじゃないかなどと考えたらしく、中々手が出ずにいた。 「これ、どうやって抜けば良いの。邪魔なんだけど・・」 葵は、胸の針を指差しながら聞いた。 「抜くことは、出来ませんよ。」 当たり前だよこの野郎、みたいな口調で黒いのは言った。 「あ・・ただ小さくする事は出来ますよ。」 しかし、思い出したかの様に、笑顔で答えた。 「じゃあ、小さくして。」葵は命令。 「私には出来ない中注文です。」 ジークスは拒否。 「いや、出来るようにしといてよ。」 「それはこちらの台詞。と言いたい所ですが、初めてこられる葵様は、ご存知無いのも当たり前ですね。」笑顔でジークスは言った。「じゃあどうすれば良いの??」 少々不機嫌そうに、胸に刺さる針をコンコン叩きながら、葵は言った。 「念じて下さい。小さくなるように。」 自分の胸に手を当て、ジェスチャーをしながら、ジークスは説明した。 「ん〜、分かったわ。」 そう言いながら針に手を置き、目を閉じて葵は念じた。 すると、反応したかの様に僅かな光を帯びた針は、答えるように小さくなった。「・・ふぅ。」 「出来ましたね。」 葵が溜め息を付いたあと、本当に嬉しそうに、ジークスは喋った。 [*前へ] [戻る] |