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助太刀屋
柔らかな光
江戸。
人が絶える事を忘れた都市、金が物を言う都市。しかし薄情した訳では無かった。助け合い、支え合って、この城下街は成り立っていた。
そんな一人の少女が人を尋ねに来た。古い着物を纏い、黒髪を珍しく結っていなかった。辺りを見回しながら、目的の人物を探した。街の人はそんな姿の少女を見るなり、じっと見ていた。

「お前、まだそんなお遊びやってんの?」
「お遊びとは、酷い・・」裏路地の居酒屋。
昼時から幾人かが集い、酒を飲んでいた。中はほんのりと蝋燭が灯り、居酒屋という割には、暖かい空気が流れていた。
その隅の方の台には、遊吉ともう一人、見馴れない女性が座り、共に酒や世間話などで盛り上がっていた。「ま、私に奢れるくらいの金があんだから、多少はやれてるのね。」
座る女性は、空の熱燗の瓶を揺らしながら言った。
「あぁ、やれてる。酒要るか?」
遊吉の言葉に縦に頷き、遊吉は熱燗を二つ注文した。「私と話すの・・何年ぶりだっけ?」
女性は軽い笑顔で聞いた。遊吉はそれを聞き、少し考えた。
「う・・ん、四年かな。」遊吉の答えに、女性は軽く溜め息をついた。
「そうか・・四年も経つのか・・・。」
おもむろに答えた女性の顔は、何かを訴えてる訳でも無く、寂しそうだった。

「お嬢ちゃん、ここは飲み屋だよ。入っちゃ駄目だろう?」
居酒屋の主人は、入ろうとした女の子を止めていた。「お願いします、人を探してるだけなんです。用がすんだら直ぐに出ますから・・」
少女は主人に懇願した。考えこんだ末、少しだけならと入店をやむなく許可した。中に入った少女は、なるべく時間を掛けない様に、早く歩きながら、辺りを見回した。すると、隅の方に目をやった少女は動きを止めた。先には探していた人物が座っていた。少女は、その人が居る方へ、早歩きで近寄った。

「あの・・助太刀屋さんですか?」
少女の声は、届いた。

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