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助太刀屋
心を揺らす風
吹き荒れる風は、少年の髪を撫でていた。
その風で、回りの砂は舞い上がり、砂煙が吹き荒れた。
「助太刀屋?ふざけんじゃねーぞ、おら!」
背後の男が、威勢良く言ってきた。
「これでも立派な仕事だぜ?」
助太刀屋はニヤつき、刀を下ろしながら言った。
背後の少年は希望か絶望か、複雑な心境で見上げていた。
「俺ぁ争いは嫌いでね。この餓鬼の米代、俺が払ってやるよ。それでこの争いは止めないか?」
刀を終いながら、助太刀屋は連中に告げた。それを聞いた相手は、大声で笑い出した。
「そんなんで治まっかよ。馬鹿か?お前。」
相手は見下した様な目で、助太刀屋を睨んだ。
「分かった、言い方変えてやるよ。ボコられたくなかったら、これ受け取って帰れ。」
そう言うと助太刀屋は、布財布から金を出し、相手の前に投げた。しかし相手は更に笑い、助太刀屋の金を蹴り飛ばした。
「へ〜、折角の救いの手を棒に降るのか。」
助太刀はニヤニヤしながら、袖に腕をしまった。敵は既に牙を剥き出しにしていた。
「お客さん、指定あるかい?」
助太刀屋は、後ろの少年に聞いた。
「え?」
状況すら掴めていない少年は、驚いた様に声を上げた。
「なかったら、普通に殺すけど?」
助太刀屋は、迫り来る敵にも動じずに返答を待った。敵はそのまま助太刀屋に切り掛かった。助太刀屋はその打撃を片腕で受け止めた。しかし、大きな金属音を出し、刀を止めた。
「こいつっ・・何か仕込んでやがる!」
切り掛かった相手は、その状況に驚き反応が遅れ、助太刀屋のみぞおちの打撃を喰らい、そのまま倒れ悶絶した。
「ふぅ・・お客さん、指定まだ〜?」
相手が倒れている間、再び少年に聞いた。
「え・・あっ・・・こ・・殺しちゃ・・だ・・駄目。」
震える声で助太刀屋に告げた。それを聞いた助太刀屋は、ニッと笑い刀をを左手に持った。
「注文、承ります。」
助太刀屋がそう言う頃には、既に転がっていた一人は起き上がり、三人共が刀を抜いて構えていた。相手は慎重に間を詰め、助太刀屋に迫って行った。しかし助太刀屋は、左手に抜いてない刀を持ち、平然と立っていた。そんな事が続き、いつしか助太刀屋は、三人に囲まれてしまった。
「さぁ、覚悟しろよな・・」
囲まれた助太刀屋に、正面の男が笑いながら言った。それに合わせ、後ろの二人も構えた。
少年の髪を撫でていた風はいつしか強くなり、少年の心までも揺らしはじめた。

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あきゅろす。
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