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助太刀屋
プロローグ
少年は走っていた。
奴らから逃げるために。
そして愛おしい妹を養う為に。
その手は汚れてしまった。ある欲望の為に染まってしまった。
盗んだ米を巾着に包み抱き走る少年の、通り過ぎて行く人は冷たかった。
何もせず、ただ面白おかしいく見ているだけだった。後ろから迫り来る脅威達は、刀を片手に追いかけていた。
「餓鬼待ちやがれー」その声は少年に届き、更なる恐怖を生んだ。
走る少年は村を抜ける鳥居に近づいた。
あそこまで行けば助かる。あの鳥居を潜れば・・
しかし世は残酷。
無情にも、ここで足を引っ掛けた。
こんな事があるか、後数十歩なのに。
立ち上がろうと米を抱くが、刀が自分の前に刺さり、道を塞いだ。
少年には、もう体力は無かった。立ち上がろうにも、足が言う事を聞かず。
脅威は自分の背後に着ていた。
「おう餓鬼、わかってんだろうな?」
脅威は刀を抜き、少年の背後に迫った。
少年はすかさず道を塞いだ刀を取り、構えた。
力一杯振り回した。
声にならない声を出し、ただがむしゃらに振り回した。
しかし、相手の刀に軽くあしらわれ、持っていた刀は飛んでいった。
少年は、別の脅威に腹を蹴られ転がった。
少年はそのまま疼くまり、腹を抱えた。
痛みに顔を歪ませ、その瞳には涙が溜まっていた。
村の人間は、その光景を見た後、そそくさと家に入って行った。
脅威はじりじりと迫り、少年を見下した。
少年は顔を地に付け、奴らを睨んだ。
「お遊びは、ここまでだ。」
脅威は刀を振り上げた。
少年は必死の覚悟で、脅威を睨んだ。
そして、刀は振り下ろされた。
その時少年は目を力強くつむった。
しかし、大きい金属音がし、少年には刃届かなかった。
「ごめんねお客さん、遅くなちゃった。」
多少服装を乱し、髪を荒く括った男が、少年と脅威の間に刀を割り込ませ、少年を救った。
「貴様・・誰だ?」
刃を振り下ろした男が、割り込んだ男に言った。
「助太刀屋・・知らない?」
男は笑っていった。
その姿は、侍と言う様な風貌ではないが、侍を思わせる風格があった。
男の名は「遊吉」。
そして今、遊吉の仕事が始まった。

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あきゅろす。
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