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チェンジ(月L)7000hit


「―…っ‥ん‥」

朝の日差しがカーテンの隙間から入ってきて、私は手首にある鎖を鳴らしながら目を擦った。
まだ視界が定まらない。


「‥ら、ぃとく‥」


あれ、声が変です。
風邪でもひいたのでしょうか?
私は取り敢えず月くんを起こすことにした。


「起きて‥え…?」


布団を捲ってみれば、私がもう一人。
規則正しい寝息を立てながら眠っています。


私は珍しく気が動転しました。
どういうことなんでしょうか?これは。


「‥ん、竜崎‥」
「ら、月くん‥?」


私の形をした人間は
私の声で私を呼んだ。
仕草が月くんそっくり。
まさか‥


「ぼ、僕が二人っ?」
「やっぱり。中身が、入れ替わってしまったようですね‥。」
「入れ替わる!?そんな馬鹿馬な話が‥っ」


月くんはどんどんと足音を立てて洗面所に向かう。
私も着いていかざるを得ない。


「な‥僕の顔も、身体も竜崎だ」
「私の顔も身体も月くんです‥最悪です。」


私はその場に座り込んだ。
これからどうしよう?
どうしてこうなったのか?
そもそも、いつまで続くのか?


「…月くん、これからどうしましょう?」
「……………」
「月くん?」


私は返事がない月くんを見上げてみた。


「なっ、何やってるんですか?」
「え?観察。」
「やめて下さいっ!」


月くんはズボンに手を入れてじっと見ていた。
もう最悪です。
さすが変態です。


「いつも見てるけど自分についてると変な感じ」
「気持ち悪いです」
「いつもこれをイカしてるんだもんなあ」
「少しは黙って下さいっ」


私は顔が熱くなり目をそらした。

どうしましょう‥
今日だって捜査があるというのに。


「っ‥とりあえず、今日1日は様子を見るしかないです。月くんは私として生活して下さい。」
「竜崎は僕として生活するのか?無理があるだろ」
「仕方ないんです、やるしかありません。」
「変な行動とるなよ」
「お互い様です。」






「お早うございます。竜崎、月くん。」
「お早うございます、松田さん。」
「りゅ、竜崎?ど、どうかしたんですかっ?」
「え?」
「笑顔で挨拶なんて‥初めてじゃないですか」
「え、あ、そうですか?」


‥月くんの馬鹿。
私は普段、松田に優しくないです。
そんなに笑顔も見せません。


「ちょっと、ら‥竜崎」
「?」


私は月くんを部屋から連れ出した。


「あんまり笑わないで下さい。気持ち悪いです」
「気持ち悪いって、自分の顔だろ?」
「だから言ってるんです。私はあまり笑うタイプではありません。それと敬語で話して下さい。」
「ああ、そうだったな。敬語使わなきゃ。お前は今日は笑顔でいろよ」
「何故です?」
「僕は普段笑顔だから。」
「面倒臭いです。」





「あ、竜崎。何処行ってたんですか?」
「ま、松田。何処だっていいでしょう。」


なかなかの演技です。
さすが月くん。


「‥おい、ライト」
「あ、と、父さん‥」


夜神さんのことを父さんと呼ぶ日が来るなんて‥
なんだか不思議です。





PM3:00

「‥あ、月くん。そろそろミサさんとのデートの時間じゃないですか?」


松田が、私の方を見て言った。
もうこんな時間ですか。


「そうですね。竜崎、行きましょう。」
「え、竜崎に敬語?」
「‥あはは、気分です」


笑って誤魔化した。
こんな時だけ何故だか勘のいい松田。

私は私の形をした、中身は月くんの私を引っ張って部屋を出た。


「‥もう疲れました」
「僕も。あの座り方、すごく疲れる。」
「私は普通に座らされて窮屈で仕方ないです」


長い廊下を並んで歩く。
じゃらじゃらと
鎖が擦れる音がする。
ミサさんの部屋に着いて、私はドアを開けた。


「あ!ライトおっ」
「え、あ、こんにちは」
「どうしたの-?今日のライトちょっと変〜」
「そ、そうかな?」


横目で自分を見ると微かに睨んでいた。
口パクで上手くやれと言われる。
うわ、私睨んでる時、あんな顔なんですね。


「今日も竜崎さんいるし〜たまにはライトと二人きりがいい〜」
「黙って下さい。私だってしたくてしている訳じゃありません。」


‥名演技。
上手すぎです。


「竜崎さんの意地悪〜。あ、そういえばねっ、この前ミサいっぱい雑誌の写真撮ったからライトに見せたげる〜」


そう言ってミサさんは
写真を持って来て私に見せた。


「コスプレいっぱいしたんだよ〜」
「か、可愛いよ、ミサ」
「やだ〜ライトったら!」
「どれ、私にも見せて下さい。」
「珍しい〜竜崎さんがこんな物に興味もつなんて」
「たまたまです。痛っ」
「竜崎さん?」
「いや、何もないです」


私は月くんの足を踏んだ。
あくまでも自分の身体だから優しく。
私はそういった類には興味がないのに最低です。


「へぇ〜、可愛い洋服ですね」
「分かる〜?このチャイナ服なんかフリルついてて可愛いでしょ?」
「ええ、実に。着せたいものです。」
「何か言った?」
「痛っ」


私はまた足を踏んでやった。
そのあと私達は雑談を交わし、時間になり捜査本部へと戻った。




「あ、お帰り。竜崎、月くん。あれ?月くん疲れた顔してるけど大丈夫?」
「大丈夫です、少し疲れただけです」


ああ、今日は普段の数倍疲れます。
月くんとして生活するのは、笑顔でいることでも疲れますし、慣れない話し方にも神経を使います。


「‥そろそろ今日は終わりにしませんか?」
「ライトからそんなこと言うなんて珍しいな」


夜神さんに言われる。


「月くんも疲れているようなので今日は終わりにしましょう」


月くんが助け船を送ってくれ、なんとか今日の捜査は終わりになった。






自分達の部屋に帰り、一息ついた。
ソファーに座る私に月くんが紅茶を淹れてくれた。


「お疲れ、竜崎。」
「月くんもお疲れ様です。今日は疲れました」
「僕も。竜崎でいるのは辛いな。」
「月くんでいるのも辛いです。笑ってなくちゃならない。」
「僕は甘い物を食べなきゃならないよ。」


私なんて甘いものを今日は我慢してました。
辛かったです。


「そういえば竜崎」
「何です?」
「お前痩せただろ?」
「そうですか?」
「絶対痩せてる、ほらこんなに細くなってる」


そう言って月くんは服を捲ってお腹を見せた。


「私の身体なんですから意味もなく、出さないで下さいよ」
「今は僕の身体だ。そんなことよりもっと食べた方がいい。」
「そうですか?」
「だからいつも三回目くらいで気絶するんだよ」
「‥変態」
「突いてる時、腰折れちゃいそうだしな」
「…私の顔で、私の身体で下ネタ言わないで下さい」


私は立ち上がった。
すると月くんが私の手首を掴む。


「そうだ、竜崎。いいこと思い付いた」
「今度は何です?」


月くんは何やらクローゼットをあさって、何かを持ってくる。


「見ろ、竜崎!」
「気持ち悪いです‥」


月くんの手には様々な衣装、すなわちコスプレというもの。
私の顔でそれを持ってにやにやしないで欲しい。


「これ前から竜崎に着て欲しかったんだ」
「断固、拒否します。」
「別にいいよ、今着ちゃうから。」
「…は?」


まさか自分で?

「この身体、竜崎の。今のうちに楽しんどく。」
「や、やめて下さい!」


やっと意図が分かり、私は必死で止めた。
月くんは私の身体を利用して、今着るつもりだ。
いくら自ら着てないにしろ耐えられない。
誇りも何もあったもんじゃない。


「大人しくしないと、襲うよ?お前の身体で」
「っ‥最低ですっ」


月くんは簡単に着てしまった。
さすがキモイト‥
欲望のためなら躊躇も何も無い。
ぶりぶりのメイド服。
これが貴方の趣味ですか。


「竜崎可愛い」
「‥こんな拷問を受けるくらいなら死んだ方がましです‥」


月くんは私に何の配慮もなく、私の顔でにこにこ笑ってる。
ああ、もう最悪。


「‥いつまで続くんでしょう」
「確かに。最初はこうやって楽しいからいいけど」
「私は全然楽しくありませんよ」


私はソファーに項垂れて目を瞑った。
これからのことを考えると気が遠くなる。

月くんが隣に座って私を見た。
もう一人自分がいるみたいで変。


「いつもならこんな時、君にキスしてるけど今日は出来ない。」
「相手が自分じゃ萎えますよ、そりゃあ。」


‥あ、眠くなってきた。
もう寝ちゃおう。
今日は疲れましたし。

私は眠りについた。




「―‥竜崎?」
「……………」
「寝ちゃったか」
「………………」
「竜崎とキスしたいなあ」




「ん…っ‥」

昨日と同じように朝を迎える。
どうやらあのままソファーで寝ちゃったんですね。
隣を見れば月くん。
すやすや眠ってる。
…あれ?
元に戻ってる…?

「ら、月くんっ!」
「っ‥ん…?」
「起きて下さいっ!私達元に戻ってますよ!」
「えっ!?あ、本当だ」
「よかったですねっ、ああもう良かった。」
「原因は何だったんだろうな?」
「分かりません、本当に不思議です」


私は取り敢えず安心して息を吐いた。
月くんも自分の身体を確めて安心していた。


「竜崎」
「っ‥?…っ…」


いきなりキスされた。
深く、深く。


「ら、月く‥これから…捜査がっ‥」
「そんなのどうだっていい。もう我慢出来ない」


耳元で囁かれば最後。
月くんの甘えを聞かない訳にはいかなくなる。


「っ‥月くっ…」
「たまには遅刻して出勤ってのもいいんじゃない?」
「仕方、ないですね」


私は黙って月くんの首に腕を絡めた。
それが合図かのように月くんは私を持ち上げてベッドへ運ぶ。


「もう入れ替わるなんて御免だな。キスも何も出来やしない。」
「私もコスプレなんて御免ですよ」


月くんは笑った。

今日は私が初めて捜査をサボった日




end








*あとがき*
長々と駄文失礼致します。
7000hitということで
楠川祥様にリクして頂きました☆
『月とLが入れ替わったら‥』というこで、素敵なリク有難うございます。

キモイト出ちゃいましたね(--;)笑
Lが若干引き気味でした。


ここまで読ンで下さり有難うございます。

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