死帳文
独占欲*月



僕は嫉妬深い。
だって君は僕のもの。



「―‥竜崎、竜崎っ」
その日、松田さんは竜崎のためにケーキを買いに外出していた。
今、帰って来たみたい。


「お帰りなさい、松田」
「買ってきましたよ〜」
「どれ、早く箱を開けてみて下さい。」


竜崎の顔は心なしか
わくわくしてる。
‥なんか面白くない。


「まずはですね〜、モンブランですっ」
「まあまあですね」
「次はですね〜」


何やら竜崎と松田さんは二人でケーキを話題に盛り上がっている。
僕は横目で見てた。


「‥あとは?」
「今ので最後ですよ?」
「‥え?」


竜崎の顔色が変わった。


「竜崎‥?」


松田さんが竜崎の顔を覗き込んだ。


「‥松田の馬鹿っ」
「へ?」
「苺は?ショートケーキはどうしたんですかっ?」
「だって竜崎、特に注文しなかったじゃないですか」
「馬鹿っ、言わなくても分かるでしょうっ?」
「すみませんって、殴らないで下さいよ〜」


ぼかぼかと竜崎は松田さんを殴った。


‥面白くない。
面白くないよ、竜崎。











夜になり竜崎と二人きり。…………‥‥
沈黙。



「…夜神くん」
「……………」
「夜神くん?」
「……………」


僕は無視をした。
ひどく苛立っていて。


「どうかしたんですか?」

竜崎は身を乗り出して僕の顔を覗き込む。
爪を噛みながら。
どうして僕が不機嫌なのか理解出来ず、考えているのだろう。


「‥夜神くん」
「っ……」


竜崎は、僕の頬にキスをした。
いきなりの事に少し驚いてしまった。


「何をさっきから怒っているんですか?」
「‥怒ってない。」
「夜神くん怒ってますよ。私何かしました?」
「…何もないって。」


僕は立ち上がった。
鎖と鎖が擦れる音が変に響いた。

‥もう寝たい。
今日は苛立ってどうしようもないから。


「‥僕はもう寝る。」
「では私も寝ます」


ベッドに入っても沈黙が続く。
静かな時間。
竜崎が口を開いた。


「‥静かですね。」
「…‥ああ。」
「他愛もない会話でもしませんか?」
「…………」
「―‥今日ワタリが」


誰も許可していないのに話し始める竜崎。


「‥それで松田が」


―…あ、苛々する。
本当は分かってるんだ。
この苛つきの原因。
竜崎と松田さんはなぜか仲がいい。
それに納得がいかない。
だって君は僕のもの。


「松田さんの話やめろ」
「え?」


子供じみた嫉妬。
見え過ぎな独占欲。


「松田の事‥嫌いなんですか?」
「………嫌いだ。」
「何でです?」
「‥分かれよっ」


僕は竜崎にのし掛かった。竜崎はびくっと肩を揺らした。


「お前は僕のものだろ?なのに‥」
「夜神くん‥?」


僕は貪るようにキスを落とした。
深く深く。


「んんっ、ん‥ふぁっ」
「っ‥竜崎…」
「………?」
「‥松田さんと喋らないでよ。」


身勝手な感情。
君は驚いていた。

こんなに独占欲が強いなんて自分でも知らない。
沸々と体内で燃えてくる感情に理性が崩れる。


「―‥分かりました、松田とは余り話さないようにします」


竜崎は僕と視線を合わす。

「その代わりちゃんと言って下さい。僕は嫉妬していると」


竜崎が笑いながら言った。

「‥お前性格悪い。」
「夜神くんには負けます」
「馬鹿」
「夜神くんも松田なんかに嫉妬する馬鹿ですよね」


僕は黙った。
言い返せない。
君はまだ笑ってる。
‥僕は確かに馬鹿だな。


「―…嫉妬したよ、竜崎が好き過ぎて。」


僕は竜崎を抱き締めた。


「今日の夜神くんは少しだけ可愛いです」


竜崎は僕の頭を撫でた。


「夜神くん、私は貴方が好きです、誰よりも」
「ああ、分かってる。だけど‥」






だけどやっぱりね‥


「松田と喋るのは禁止」




僕は嫉妬深い。
だって君は僕のもの。

幼稚で負けず嫌いな
僕の性格
どうか許して。



end





*あとがき*
読んで下さり有難うございました。
嫉妬をテーマにしてみましたが、どうでしょうか?
Lサイドもありますので宜しければ読んで下さい。
たくさんの感想メール、有難うございます★
メールを頂けると大変参考になり勉強になります。
お返事早くするよう努力します。

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あきゅろす。
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