死帳文
甘い味



―夜。

いつものように僕と竜崎は二人きり。
大して会話もなく、僕はソファーで読書を、竜崎は角砂糖を積んで遊んでいた。
僕がページを捲るたび
鎖の冷たい音が部屋に響き渡る。



「‥楽しいか?」
「何がです?」
「砂糖の積み木。」
「ええ、まあ。退屈しのぎにはなりますね。」
「ふーん」
「夜神くんは、なに読んでるんですか?」
「何だっていいだろ。」
「そのブックカバー、怪しいですね。」
「変に探るなよ。」
「大丈夫です、健全な男子だとそれが普通ですよ」
「やっぱり変に解釈してるじゃないか。」


僕と竜崎は、視線を合わせたまま沈黙。
見つめれば見つめ返してくる。
僕も負けじと視線をそらす事はしなかった。




―意外と睫毛長いな。
僕ほどではないけど。
本当に漆黒な瞳
吸い込まれそうだ。




「‥いつまで続ける?」
「はい?」
「見つめ合い、僕は竜崎の可愛い顔を堪能出来て嬉しいけどね」
「それは私も一緒ですよ。夜神くんの綺麗な顔を観察出来て楽しいです」



‥沈黙。
視線は合ったまま。
顔色一つ変えず見つめてくる。

―調子、狂うな。
こんなに長い時間、竜崎と視線が合う事なんてない。
だから少し変な感じ。


「‥竜崎。」
「何です?」
「キスしたい」
「そうですか。」
「竜崎に見つめられてたら欲情しちゃった」
「‥気持ち悪いです」
「失礼だな、竜崎だってキスしたくなったんじゃないの?」
「全然。」
「本当に?」


邪魔な本はどけて
僕は竜崎に覆い被さった。


「キス‥したくない?」


耳を甘噛みしながら囁く。


「ん‥全然っ…」
「じゃあしないよ?」


ペロッと首筋を舐めた。
竜崎が真っ赤になって俯いてしまう。


「―‥したい」
「ん?」
「‥したいですっ」
「何を?」



―君に意地悪を。
真っ赤になった頬に触れて額を合わす。
無理矢理視線を合わす。


潤んだ目。
熱い吐息。
今にも泣き出してしまいそう。


「キ‥ス…して下さ‥」
「ん。よくできました」


少し濡れた睫毛を舐めて
頬を舐めて
やっと唇に触れた。

甘い甘い君の味。
舌と舌が絡む音。
全てが愛おしい。


「…ふっ、ふぁっ‥ん」
「…っ……‥気持ち良かった?」


間近で目を合わせ問えば
君は目をそらした。


「‥変態。」
「変態に好き放題されてるのは竜崎だよ」


僕はにっこり笑った。
君は拗ねたように僕を睨んだ。


「可愛い。」


僕は竜崎を抱き締めた。


「苦しっ‥」
「ごめんごめん、謝るからさ、この続きもさせてくれない?」
「‥やっぱり変態。」
「変態でも何でもいいよ」





甘い甘い君。
いつも欲しくて堪らない。
少しくらい
我が儘聞いて?
後でケーキをあげるから。




end






*あとがき*
甘甘目指しました。
砂吐くほどの甘ですね。

読んで下さり有り難うございました。

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あきゅろす。
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