死帳文
甘い香り。



手錠生活を始めて一週間が過ぎただろうか。
僕は今日、竜崎に言いたいことがある。

「―‥竜崎。」
「何です?」


ケーキを頬張りながら、竜崎の視線は僕に向いた。


「少し甘食を控えないか?」
「何でです?」


竜崎は目を見開いて僕を見上げた。
駄目だ。
この可愛い顔に負けちゃいけない。


「僕達は四六時中一緒にいる、匂いがつくんだ。」
「甘い匂い‥ですか?」
「ああ」


洗っても洗ってもとれる気がしない甘い香り。
別に甘い物が苦手な訳じゃないけど。
好きな訳でもないから困るんだ。


「いいじゃないですか。美味しそうで。」
「僕はケーキじゃないんだよ?鼻につく。」
「‥どれ。」
「竜崎‥?」


いきなり竜崎が僕を嗅ぎ始めた。
犬みたいに。


「‥本当ですね。甘い。」
「僕でこうなんだから、竜崎はもっと甘いんだろうね」
「自分じゃ分かりません。」


竜崎は自分の服の袖を
クンクン嗅ぎはじめた。


「‥竜崎は甘いよ。」
「はい?」
「すっごく甘い。ほら‥」


僕は竜崎の唇に唇を重ね合わせた。
もちろん舌を入れる事も忘れずに。


「ふっ‥ん…っ‥」


可愛く竜崎は啼く。


「‥…ぷはっ‥っ…」


唇を離したら
竜崎の目が潤んでた。


「やっぱり甘い。」
「‥変態。」


竜崎は口を拭きながらスタスタ歩いてソファーに座ってしまった。


「‥私、甘食控えたりしませんからね。」
「はいはい、好きにしていいよ。僕も好きにさせて頂くから。」





君が甘いものを
我慢出来ないように、
僕も甘い君を
我慢出来そうにないから
好きにしていいよ。


その代わり僕も好きにさせてもらうから。




end










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