舞風学園
始動
「じゃ………打ち合わせ通り行きます。俺は西側に」
「オレは南っスね!」
「僕は北方面に」
「俺様が東だ。アイツ等、場所がバレネェようにしやがったから何処に表れるか見当つかねぇーから気をつけろ………検討を祈る」
所長の言葉を合図に一斉に各方面へと向かった。
◎筧Side
「やっぱり、オレのせい何っスかね………アイツ等が争い始めたのは………あの時、オレがしっかりとしていなかったから」
紫苑達と離れてから、その事ばかりがずっと頭の中をグルグルと回っている。あの時、俺がしっかりしていれば、こんな事は起きなかったのではないかと言う後悔が………
「けど、何時までも悩んでたらダメっスね!アイツ等を止めなきゃ」
アイツ等を止めると言う事を胸に秘め目的地である南の方へと走り出した。
◎旭Side
「急がなくては………争いが始まる前に」
旭が向かった北の方面は、裏の人間が多く集まる街で夜になると結構賑わうのだ。
「あれ?孝さんじゃないですか!珍しいですね、飲みにでも来たんですか?」
街に入った所で後ろから声をかけられた。誰だこんな忙しい時にと思い後ろを振り向くと見知った顔がそこにいた。
「お久しぶりです!覚えてますか?“CHESS”のポーンです」
「覚えてるよ。CHESSのメンバーは元気かい?特にキングは」
「はい!あの人は無茶苦茶元気ですよ。あの人が元気じゃなかったらその日は雨ですよ!」
「確かにね、彼が元気じゃなかったら怖いね」
「はい………それよりどうしたんですか?街に来るなんて……何かあったんですか?」
「いや………大丈夫だよ。征さんに頼まれて街に来ただけだからね」
僕はその事に対して一瞬だけ目を細め、直ぐに笑顔を作った。いくら知り合いでも“CHESS”の彼にバレないようにしなければならない。何故なら……僕たちがしようとしている事がCHESSの連中に知れたら絶対に彼等の事だ、手を貸しに来るに違いない。それだけは避けなくては……これは僕たち紅氷牙の問題なのだから……
「そろそろ行かないと「行くって何処にです?孝介さん」……っ!」
「キング・クイーンお疲れ様です!」
今、最も聞きたくなかった声がポーンの後ろから聞こえて来て嘘でしょと思いながらも顔に出さないよう必死に堪えた。そのため、顔が引き攣ったのは言うまでもない。
「っ………久し振りだね………キングにクイーン」
僕の作り笑いに、気付いたのかどうかは分からないが一瞬だけ、2人の目が細くなったのを見た。ポーンは、流石と言うべきか周りの空気が変わったのに素早く気付き瞬時に笑顔を消した。CHESSのトップメンバーの中で一番下といっても称号を持つだけはある。
「久し振りです。孝さん」
「孝介さん、お久し振りです。お元気でしたか?」
「お蔭様で元気でいますよ。それに、2人とも元気そうで何よりです。他の皆も変わりありませんか?」
このピリピリした空気の中で、3人が3人とも笑顔で会話しているのだから他の人から見れば異様な光景だ。
「ええ、皆元気です。元気すぎて困る時もありますけど………」
「そう………それは良かった」
その、元気すぎる光景が目に浮かび思わず苦笑してしまった。何処のチームでも変わらないんだと………
「……さてと、そろそろ戻らないと征さんが煩くなりそうなので行きますね」
腕時計を見ながら彼等に声をかけた。時間を見ると各場所に別れてから約30分以上が経過していて、流石にヤバイっと思った。
「………」
「……キング」
「ああ…孝介さん、俺達には何も話さず行くつもりですか?」
「!!?………っ何の事かな?」
3人の視線を受けながら何とか話を逸らそうと試みるが、キングとクイーンの“逃げられると思わない方がいいですよ”と言う鋭い視線を感じて諦めるしかない。
「諦めてください。貴方方が何故動いているのか、こちらはもう掴んでるのですから」
「諦めて降参しろ………」
「はぁ〜分かりました。こちらも話すので、貴方達が持っている情報を教えなさい……それとキング、年上には敬語」
「結論から言えば………今回の騒動は、誰かが仕組んだのではないかと言うのが私達が出した答えです」
「そんな……彼等に限って引っ掛かるなんてありえません!」
確かにあいつ等は、昔から仲が悪くて毎日といっていいほど喧嘩してたけど……でも、あいつ等は誰かが仕組んだ罠なんかに引っ掛かるはずない。
「確かに………今回の騒動は奴らに限ってだが……誰かが裏世界に噂を流しやがったんだ」
『あの紅蓮・氷銀・龍神・Red Tailの連中は、自分達が最強だと罵ってるが実際は、馬鹿な奴らの集まりだ!それに最強と言いながらも4つの族が争った事はないじゃないか』
「その噂が広まり、今まで怖がっていた他のチームの奴らも確かにそうだと火が点いたみたいに活発になりました」
「俺等のCHESSも、それに巻き込まれたが………被害は少ししか出なかった……だが奴等は………」
言わなくても分かる………あいつ等の考え・思い・怒り・苦しみ……手に取るように分かる。あいつ等といたのは、ほんの少ない時間だったが、あいつらの気持ち。善い意味でも悪い意味でも繋がっている心と心の絆、だから僕たちは、まだ間に合う!
「いいや………まだ間に合う。僕たち依頼屋は、彼等を止める為に動いているんだ。それに、可愛い後輩達を見捨てるわけにはいかない」
「言った通りになったじゃないですか?キング」
「っ///……うるセェー言われなくても分かってる!」
キングは、クイーンが言った事に対して顔を真っ赤にさせた為、まるで真っ赤な林檎のようだと苦笑してしまった。幸い2人には、バレてはいなかったがポーンの彼には、見られてしまったので口の前で人差し指を立てて彼にシーと合図した。すると何故か分からないが、ポーンは、顔を真っ赤にさせ首が取れるのではないかと思うぐらいの勢いで頷いていた。
「クス………それでは、僕は急がなくてはいけないので行きます。情報、本当にありがとう」
「孝介さん………俺達は、何時でも何処でもアンタ達に呼ばれたら何処でも駆け付ける!それが………俺達、CHESSを救ってくれた一生の恩返しだ」
キングから恩返しだと言う言葉を聞き、本当に嬉しくなった。CHESSを救った事は間違っていなかったんだと………だから今度は、あいつ等を救ってみせる。
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