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キリリク




「……眠れない」


 ベッドの中で、さっきからモゾモゾと寝返りばかり。あの曲と、ユキの表情が脳裏にこびりついて離れないんだもん。

 特に、あの熱っぽい瞳。SEXを求めてくる時みたいな。あの眼差しに、全身絡め取られてしまってるみたいだ。


 なんだよ、公共電波使ってSEX誘ってくんなよ!あほユキ!!


 今は居ない、広いベッドを埋めてくれる存在に悪態ついて、ギュッと目を瞑った。





 うとうとし始めた頃。物音で目が覚めた。…ユキが帰ってきたんだ。

 なんとなく顔が合わせづらくて目を閉じたままでいたら、寝室のドアがソッと開いて、遠慮がちな声が聞こえてきた。

「ただいま。ナツ…起きてる?」


 一瞬このまま寝たフリ続行しようかとも考えたけど、どうせバレるんだしと思い直して目を開け、身を起こした。

 廊下の灯りが、暗闇に慣れた俺の目に眩しい。


「あんまり眠くなければ、起きて冷たいものでも飲まない?」


 眠れないのを見透かされてるようでムカつくが、ユキの声がとても優しくて、俺はついついベッドから出てしまった。



 煌々と明るいリビングで目をシパシパさせてると、アイスティーの入ったグラスが運ばれてきた。

 礼を言いつつ初めてマトモにユキの顔を見て、ビックリ。メイクしたまんま。ノーメイクでも充分綺麗だが、今のユキには匂い立つ色香がある。


「“FAIR”見てくれた?」

 カーペットの上に座ってる俺の前に膝をつき、優しく訊ねてくる。俺が素直に頷くと、

「どうだった?」

 と、身を乗り出して感想を求めてくる。



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あきゅろす。
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