キリリク
恋の花 さん
きっかけは俺の体調不良。
大型プロジェクトの激務による寝不足と過労、栄養不足諸々。俺はボロボロだった、心も体も。
そんな時、同じ課の花戀に社内で偶然遭遇。イライラしてたからシカトして通りすぎようとしたんだけど、
「小鳥遊(たかなし)さん、」
空気を読まない花戀は、ピリピリしてる俺に声を掛けてきたんだ。
眉間に深く皺を刻んだまま目線だけ向けても、彼女は怯むことなく俺の顔を覗き込んできた。
「やっぱり、顔が青いですね」
言って、バッグをゴソゴソと漁り、
「手、出して下さい」
その一連の流れがとても自然で、つい手を出していた。
「はい」
コロン、と載せられた大振りの飴玉。包装を見る限り、それはレモン味らしい。
「疲れとか低血糖とかには、糖分がいいはずです。気分転換にもなりますよぅ」
ふわり。そんな表現が似合う笑みを浮かべ、
「身体を壊しても、会社は面倒見てくれませんからね。バカバカしいから、ちゃんと休んで下さい」
なかなか現実的な忠告をして、ヒラヒラ手を振り去っていった。
俺は、アレにやられたんだ。あのさりげない気遣いに。
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