キリリク U 留年するほど心身に多大な傷を負った奏南。第二の事件勃発を危惧した学校側と父親は、普通ならまずあり得ない選択をした。 禮のクラスに奏南を在籍させる――実弟を、護衛役にしたのだ。 席は常に隣。体育はどうせ参加しない禮だから、校庭や体育館の隅で奏南を見張らせた。女子の嫉妬も、なかなかに恐ろしいので。 そうやって常に側近くにいるのに、『橘奏南の番犬』と揶揄されるほど、このエゴイストが従属しているのに。 実姉と知っていても尚、女共があらぬ嫉妬と憎悪を抱くほど奏南に意識を向けているのに。 ――何故、俺を見ない。 . [*前へ][次へ#] [戻る] |