絶対無敵! A 「父方のイトコってコが来たんだけど。如月ユウナって言ってる」 「ユウナ…?ああ…」 のっそりと上体を起こし、乱れた髪を掻き上げる。 「確かにイトコだ。玄関開けてあげてくれ」 「オッケー」 返事をして踵を返そうとすると、引き留められる。 「何?」 「おはようのキス」 顎を反らして、流し目をくれる。 ここで断ると、後々までブチブチ言われるから、サッと唇に軽くキスして、腕を掴まれる前に身体を離す。 そうしないと、ベッドに引きずり込まれるんだよね。来客があるのに、頬を上気させて応対するわけにはいかないだろう。 「ナツのケチー」 ぶうたれるユキはシカトで、玄関のロックを開けるため、俺は寝室を後にする。 「さっさと起きなね。ユキのイトコが来たんだから」 因みに、俺にとっては他人だ。 ドアホンが鳴って出迎えてみると、何て言うか…普通? 「初めまして。私、如月ユウナ」 ハキハキと喋る元気なヒトだけど、見てくれが普通で、ちょっと肩透かしくらった気分。 人混みの中でも埋もれてしまわないユキと比べると、十人並みすぎて意外。まぁ、俺も十人並みだけどさ。 「初めまして、木村夏樹です。どうぞ」 彼女を中へと促して、リビングに案内する。お茶の用意を始めたところで、ユキが起きてきた。 「紫雪!」 ユウナさんは顔をパッと輝かすと、ユキに飛びついた。全身で会えた喜びを表す彼女に対し、ユキはサラリと、 「ユウナ、苦しい。離れて」 冷たい、とも取れる声音だ。ユウナさんは素直にそれに従うと、 「なんで彼がこんなに早くにいるの?泊まりに来てるの?」 俺が居候してる事を知らない彼女は、首を傾げた。 [*前へ][次へ#] [戻る] |