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「一週間ほど休みを下さい!」
「まだ今日仕事始めたばっかりでしょ!駄目!」

「やりたいことが出来たんだもん!!」


佐助は何処か、と道行く人(確か……小山田さんとか言ったかな)に声をかければ、この時間なら彼は厨にいますよ、と笑顔で返してくれた。(おお、中々の好青年!)

それにしたって奴は忍でしょ?
なんで厨……台所にいる訳?

厨にひょい、と顔を出すと、白い割烹着を着た佐助を発見。(無駄に似合うのは何故だろう。)
とりあえず第一にして絶対の要求を突き付けたが、それはあっさりと弾かれてしまった。
ぶーっ、と膨れると、呆れたような半眼でこちらを見る。


「一応聞くけど……やりたいことって何?」
「私含む洗濯女中さんのお仕事を軽減する研究!洗剤使わなきゃやってらんないよあんなの!」

「へー、研究……。まぁ、確かに洗濯って重労働だしね。……その、"せんざい"?が役に立つなら……」


ふむ、と考え込んだ佐助は、しばらくしていいよ、と一言。

よし、そうとなれば今すぐ侍医さんとこに行って器具を借りて……
と考えを巡らせていたら、急に腕を掴まれた。


「あ、ちょっと待って。味見。」
「むっ、頂く!………うっまぁあ!!何これ美味しい!」

「俺様の作品に失敗なんてないからね!」
「流石!やけに割烹着が似合うと思ったらやっぱりオカ「それは言わないで!!」っ……?」


差し出された匙を口に運ぶと、ほのかに甘い芋あんが口に広がる。
美味しさを絶賛すれば、機嫌を良くした佐助が笑った。

芋羊羹の種らしい。
完成したら分けてもらおうっと。

そうしてはっと、彼が割烹着を着こなす理由を口走ろうとしたその口は、今もそもそと大福に覆われている。何処から出したんだろ?
ま、美味しいからいいけどさ。

どうやら佐助にとって『オカン』は禁句らしい。
ごくりと咀嚼した大福を飲み込んだら、いざ、行動!


「ふじゃっ、裏山に行ってきまーす!」

「夕餉までには帰ってくること!それから裏山は危ないから十分気を付けなよ!あー、何かあったら全力で叫ぶ!」

「はいはい分かったってお母さん!」
「誰がお母さん!?!」


投げつけられたお玉が頭に当たったが、佐助との喧嘩に時間を費やす暇はない。

だっと駆け出して侍医さんの部屋の襖を開け放った。


「野草採りに行くので器材を貸して下さいっ!」
「うっわあああぁぁあ!?!」


ぶぁっ、と巻き上がった薬品の煙。
どうやら驚き過ぎた侍医さんが、混ぜていた薬を放り投げてしまったらしい。


「げっ、ほ!!あ、なまえ様……!」

「わっあ、ごめ、なさっげふん!」


慌てて窓を開けたら、夥しい量の薬瓶が散乱していてかなり驚いた。
え、なんか邪魔しちゃった感が否めない……。


「あ、野草採りの器具でしたっけ……?そこにあります、持って行って下さい。」

「ありがとうございます……ご、ごめんなさい、なんか忙しい所を……」
「え、……あ、なまえ様はご存知ないんですね……」


侍医さんが指差した先に、採取用の籠と鋏、鉈、小さな瓶が複数刺さったベルトがある。それを持って行って良いらしい。

それを手に取りながら急に入ってしまった事を謝ったけれど、侍医さんは気になる一言を残した。

知らない?何を?

聞いてみたが、薬草をただ擦り続ける彼から答は返らなかった。

もうこちらを見ない、その気まずさにそそくさと部屋から去り、山へ急いだ。







 

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