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短編
普段キレない奴ほど注意してあげましょう。(※BLちっく)



 純粋だとか無垢だとか、そんな形容詞の付きそうな笑顔。可愛い。可愛い。可愛い!…なんて周囲は溺愛してるけど、全く。

 ――吐き気がする。

 そんな風に、いつまで甘やかすつもりなんだ?なぁ、あんたらがそんなんだから、そいつはその齢で責任の取り方も知らないんだ。何でもやってもらえるから、知ろうとも思わないんだ。
 ただ、「ありがとう」って感謝するふりもせず、綺麗に笑う才能だけ磨いた。それってさぁ、傲慢っていうんじゃ無かったっけ?

 だから嫌だったんだ、あいつが俺と同じ高校に入るなんていうのは。


*****


「九条?」
「あぁ、梶浦。はよ」

 教室で騒ぐあいつから目を逸らして、友人に挨拶をする。
 本当に。あれの従兄に生まれたのが運の尽き。俺とあいつの誕生日の隔たりから計算して、つまり俺の運は生後三カ月で尽きたってことだ。半端ない不運。

「はよ。なに、お前またアレ見てたの。飽きないね」
「とっくに飽きてるわ。うるせぇんだよアレ。静かに勉強も出来やしない」
「してないくせに」
「してるっつの」
「佐一!」

 げろーん、おいでなすった。何でこっちに来るんだこいつは。良いじゃないか、わざわざ俺に同意を求めなくても。そっちにお仲間居るだろ?ほら、お仲間が俺を睨んでらっしゃる。狭量だなぁ。だから顔が良くてもイイオンナ捕まえらんねーンだよ。あ、オヒメサマに侍ってれば満足なの?

「お前はね。自覚しろ」
「へ?何を?」

 愛されてる自覚――とか、そんなくっさい台詞を俺の口から言わせるつもりか。ふざけてんじゃねーぞ。
 溜息を吐いたら、俺の機嫌が降下したのがわかったのか、お仲間のところへ帰って行く。そう、それが正解。つるむ人間は選びましょう。それまでの交友にヒビを入れるのは、あんまりうまい手とは言えない。

「九条ってさぁ」
「あ?」
「苦労人だよね」
「うーし口閉じっか清家」

 むしろ綴じっか。

「ちょ、ストップ!ホッチキスどっから出した!」

 何でも無い休み時間に、身にならない軽口を叩く時間が好きだ。どうでもいい会話故の気だるさとか、ゆるさとか。

「いきなり何言いだしてんだ」
「大変そうだなーと」
「言ってくれるなよ」

 結構傷付くぞそれ。苦労人って、そんなん解ってんだよ。だから口には出すなよ。けどな、しょうがない。

「仕方ねーだろ、あいつら馬鹿なんだから」

 まっさらな笑顔を天使みたいだなんて崇拝だか欲情だかしてる馬鹿。それが褒め言葉だなんて思ってる馬鹿。ちやほやするその態度、到底、男子高校生に接する態度じゃないから。
 つまりあの馬鹿どもは、あいつに五歳児のままで居て欲しいんだろうな。あーあ、馬ッ鹿じゃねーの。あ、馬鹿だった。
 ――いや、変態か?だって、

「今思ったんだけど、アレって光源氏計画っぽくね?」

 成長の阻害。害悪。けどそれがあの馬鹿どもの好みなんだろう?
 言ったら清家と、前の席で聞いてたらしい梶浦が噴いた。

「ナニソレ!一気に犯罪色増した!」
「駄目だもうあいつら真っ直ぐ見れねぇ」

 やっぱり否定の意見が出ないあたり、あの馬鹿どもに対する他のクラスメイトの認識が窺い知れるってもんだな。
 食堂に行くっつって、あいつらが教室から出て行く。最後の奴が、きっちり俺の机の脚を蹴って。

「調子乗ってんなよ」

 …。さっきあいつが俺に話しかけたことか。恋するオトメならまだしもオトメンの嫉妬うっぜぇ。

「あー、気にすんな九条」

 慰めてくる梶浦に笑う。落ち込むとか、そういう意味では気にしてない。ただひたすらむかつくだけだ。
 あーマジあいつらうざい××して××してから××って××ってやりてぇ。つーかそんくらいしても許されるだろ今までのこと考えたら。あの××野郎みたいな顔面以外公害でしか無いナマモノになんで俺が睨まれるわ馬鹿にされるわっつーか明らか自分よりアホなことしかやらかしてねぇ奴らに見下される屈辱。しかもとばっちりくるしよ。なんであいつの失態を俺がフォローするんだよふざけるなこの××どもが。同じ失敗ばっかり繰り返すしよぉ、××かお前は。××ってやろうか。心の中じゃ生温い目で見るとか逆に見下し返すとか、初めは出来ても段々心の余裕なくなるし、機嫌が悪い日とかあるわけよ俺だって。意味わかんねぇしむかつくしむかつくしむかつくしあんな×××な奴ら××で××のモザイク処理しても放映できない物体に成り下がれば良い。むしろその姿を公共の電波に乗せてやりてぇ。

「く、九条。手、血ぃ出そうだから」

 清家の言葉に、はっと気付いて握っていた拳を開くと爪のあとが付いていた。うぉ、内出血。
 ぽん、と肩を叩かれる。

「ごめんな。俺、次から全力で止めるから」
「九条にあいつら近寄らせないから」
「今まで悪かった」
「俺も、あんまり力になれないかもしれないけど頑張るよ」
「優しくて男前な九条くん戻ってきて!」

 …まさか。

「俺、声に出してた?」
「『あーマジあいつらうざい』の辺りから」

 梶浦が苦笑した。
 ま、クラスメイトが助けてくれるってんなら、結果オーライだな。






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