短編
友人の将来が心配です。
教室に行ったら、友人の園原叶希がにやにやしていた。
顔面、土砂崩れ。
元は悪くないのに台無しだ。やべぇよその顔。
「かーなきー。顔キモイぞ」
「うるさい俺は幸せを噛みしめてるんだ」
折角忠告してやったのに怒られた。こいつがこんな状態になってるのは珍しいことではない。原因も解っている。
「ロリコンめ」
「せめてシスコンって言えよ!」
「血ィ繋がって無いだろ」
叶希が可愛がってるご近所の女の子。ちなみに六歳下、小学五年生。
妹分だって本人は言うけど、そんな可愛らしい妹がいてたまるか。うちの妹も小五だけど、年中反抗期の超わがまま短気な小娘だぞ。可愛げゼロ。有り得ん。
「で?今度は何があったんだ?」
「『大きくなったら叶希くんのお嫁さんになる』ってさ!」
まじかよ。世のお父さん方の夢だな。
「…段々、夢子ちゃんって子が小悪魔な気がしてきた」
「ぁあ?」
「マジ切れすんな」
だって小五って言ったら生意気盛りだろ。何そのゲロ甘な関係。夢子ちゃん、腹黒い小悪魔か本気で叶希に懐いてるかどっちかだぞ。
「夢子ちゃんが小悪魔なわけないだろ。それでも可愛いけど」
真剣な目の叶希を見る限り、将来は凄まじくやり手の女子になりそうだな、夢子ちゃんとやら。
――と、そんなことを考えたのが三日前。
今日はクソ生意気な我が妹が、家に友達を連れてきた。
「あ、お兄、この子あたしの友達!」
妹とは全く違うぽわぽわしたタイプの女の子だった。
目立つ感じじゃないけど、地味に人気が有りそうな可愛い子。マイナスイオン出てそうな……、あれだ、癒し系。
「あの、失礼してます、はじめまして」
しかも礼儀正しい!
「日方夢子です」
ふんわり微笑んだ顔に、笑顔を返しつつ、固まった。
え、
「…夢子ちゃん?」
「はい」
「…知り合いに、園原叶希って、居るかな」
「はい!よく遊んでくれるんですよ、大好きです!」
一方通行じゃなさそうで良かったな、叶希。
ちょっと安心して微笑ましい気分になった俺に、爆弾が落とされた。
「だから早く大人になって、叶希お兄ちゃんを私のものにしたいんです!」
「……、へぇ、頑張れ」
「はい!頑張って完璧に落とします!」
最近の小学生はマセてんなぁとか、そういうレベルじゃねぇだろこれ。
引きつりつつ、説得しようと夢子ちゃんの目を見たら、キラキラしていた。
無理だった。
そんな希望と熱意に輝く瞳を曇らせるなんて出来ない。叶希、駄目な俺を許してくれ。
――…友人よ、犯罪者にだけはならないでくれ。
手ぇ出したら犯罪だから。
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