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短編
ずるいよ(※劇甘。ほのぼのラブコメ)



「みぃ」

 私を呼ぶ声がする。

「みぃ」

 只ひたすら優しい音に、うっすらと目を開ける。
 そこにいたのは。

「おはよう、みぃ。朝だよ」

 綺麗な黒髪をさらりと揺らして微笑む、相変わらず美しい幼馴染殿。

「ん…」

 小さく返して、頬を撫でてきた彼の手に柔く触れる。
 暫くして、私の好きなようにさせていた彼が私の首の後ろと背に手を回して抱き起こしてくれた。

「そろそろ時間だよ」
「…はよー…」

 うん、と頷いて挨拶したら笑われた。

「まだ寝てるだろ。みぃは本当に朝が弱いね」
「んー…」

 だって、眠いのだ。
 目覚まし時計は頭が痛くなるから使いたくないし、それに、幼馴染殿が起こしてくれるから。
 まだ、甘えて良いかなって。

「…ごめんね?」

 優しさに甘えていることは解っているけれど。
 ぎりぎりまで。出来るだけ永く、離れたくないの。

「今更だよ」

 みぃの寝起きの悪さには慣れた、と彼が笑う。

 そういうことじゃないんだけど、な。

 私もほんわりと笑顔を返す。
 頭の良い彼はきっと私の考えに気付いていて、知らないふりをしてくれているんだ。
 そんな優しいところが、好き。
 好きだけど。
 時折、ひどく残酷に感じられて堪らないの。
 知ってくれたら良いのに。
 思いながら目を擦った指をパジャマのボタンに掛けて、まったりと着替える。

「制服…」
「はい」

 幼馴染殿は紳士的にも私から目を逸らしつつ、制服を取ってくれた。
 私が制服を受け取ると、パタパタと部屋を出て行った。

「んー…」

 幼馴染殿になら見られても良いのに。
 見たくないのかなぁ、年頃の男の子なのに。
 前に太っちゃったときに頑張ってダイエットしたし、本格的な美容の為のダイエットだったから胸とかちゃんと残ってるし、くびれも有るし、これでもスタイルには自信が有るのに。
 性格が幼稚すぎて無理ってことなのかな…。

「やっぱり、ちょっとは自立した方が良い…?」

 甘えっぱなしじゃ、意識して貰えないよね。
 離れたくないけど。甘えていたいけど。
 …頑張って、みようか。






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