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GOLD RUSH!
歩くフランス人形2

 転入二日目にして、田中さんは大層な人気者らしい。外見天使だし。何故か私たちと一緒に昼食を摂ってるけど。

「日本についての勉強はしました。けれど、おかしいところがあるかもしれません」

 困ったように眉尻を下げる彼女は、日本に来る前はフランスに居たらしい。父親がフランス人だそうだ。英語の教科書を日本語訳したみたいな喋り方をするのは、まだ言葉に慣れていないからなんだろう。

「ユリシアちゃんのお父様なら、整った方なんだろうね…」

 ほわほわ笑う魚沼さんに、ふわふわ笑う田中さん。何この癒し系空間。

「はい。私はお父様が大好きです」
「そうなんだ。見てみたいなぁ」

 寧ろ私は魚沼さんの両親を見てみたいけどな。どうしたらこんな子が育つんだか。

「花が飛んでるわね」
「なんか見えるよね」

 操の呟きに、心から同意した。



 ――そして放課後。
 校門の影に佇む黒衣の男。
 うん。
 なんとなく、予想はしていた。最近人外との遭遇率上がってるし。

「お父様!」

 駆け寄った田中さんを抱き止めて微笑む甘ったるい顔には見覚えがあった。
 お父様ってのがマジなら、田中さんも人間じゃ無い可能性が高いんだけど――うわ、目が合った。
 男の視線を追った田中さんが私に気付いて、手招きをする。ちょっと行きたくない。

「椋告さん」

 天使の笑顔で誘われたら断れないし、よく考えたら断る理由も無い。

「やぁ、久しぶり。ユリシアと仲良くしてくれているようだね。有り難う」
「いえ、こちらこそ。田中さん、良い子ですし」

 久しぶりって。やっぱり、あれと同一人物だよなぁ。人物って言って良いのか謎だけど。

「お父様と椋告さんは、お知り合いですか?」
「ん。ちょっと前に話す機会があってね」
「そういうわけだ。再会できるとは思わなかったが、あらためて自己紹介をしようか」

 要らないんだけど。

「私はユリシアの父の、田中一太郎という。お嬢さんは?」
「椋告小鳥と言います」

 田中一太郎。
 似合わないっていうか、あからさまに偽名っぽいけど、まぁ良いか。深く関わる予定でも無いし。

「ふむ、覚えておこう。折角会ったことだし、我が家に来てみないかね?」
「それは良い考えですね。椋告さん、私の家には美味しいお菓子があります」

 田中さん、乗り気だな。
 けど。

「すみません、今からバイトなので」

 いきなり抜けて、始有さんに迷惑掛けるわけにはいかないから。





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あきゅろす。
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