GOLD RUSH!
歩くフランス人形1
中途半端な時期の転入生ってのは、否応にも好奇心を誘うものだ。
魚沼さんは夏休み明けだったからまだ違和感無かったけど、今回は、冬休み間近の十二月。これでうちのクラスにって言うんだったら、何者かの作為を疑っちゃうかも。とか言いながらあんまり気にしないだろうけど。
人数の関係で、転入生が来たのはうちのクラスじゃ無かった。
「隣のクラスの転入生、超・絶!美少女なんだけど!!」
みな子がきらっきらした目で力強く言うけど、そういえば綺麗なら男も女も関係無いんだったこの子。
杏奈と由奈も莉子と操も、タイプは違えど割と整っている。「お友達になってください!」と突進されたのも記憶に新しい。魚沼さんにも一目ぼれに近い形で全力アプローチしてたし。
そんな子だから、昼休みに美少女を連れて来るのも予想外では無かった。
「うっわ、マジ美少女」
「お人形みたいね」
「「かっわいいー!」」
魚沼さんは、ちょっとうっとりして美少女に見惚れている。
女子力高いし、可愛いもの好きそうだもんなー…。
「でしょ!こっちゃんも、感想は?」
聞かれて、あらためて美少女をじっくり見る。
腰元まで波打つ亜麻色の髪、白磁の肌、緑青の瞳。華奢な体躯。人間というよりは、よく出来たフランス人形みたいに見える。
「すっごい整ってるね。びっくりした」
これ本当に生きてんの?とか、本気で思ってしまうくらいに整っている美少女だった。結構ぶしつけに見てるのに全然動じて無いっぽいし、感情が顔に出にくい性質なのかもの知れない。
「みな子が無理矢理連れて来たんだったらごめんねー」
と言うと、莉子たちがはっとした顔でみな子を見る。みな子ならやりそう、というか絶対やる。美少女に見惚れていて、そこまで考えていなかったらしい。
美少女がゆっくり瞬きして口を開く。
「…いえ、」
(……やっば、)
一瞬思考回路停止した。
何今の透き通った声!びびった!みな子の蕩けきった顔にもびびった!
杏奈と由奈のロリボイスとは方向性の違う美少女ボイス。鈴の鳴るような声ってこういうことか。
「なら良かった。私、椋告小鳥。よろしく」
にこっと笑い掛けると、頬に赤みがさして、ほっとしたように綻ぶ美貌。
「私は田中ユリシアと申します」
可憐って形容詞が似合う人間、初めて見たわ。
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