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GOLD RUSH!
密室の狂人3

「小鳥さん」

 翌日、志摩くんは変わらず微笑んでいた。

「…ん、何?」

 昨日の今日でこの笑顔。いったいどういう人間なんだこの人は。ちょっと精神構造が気になる。
 ふふ、と微笑む志摩くんに警戒した。
 さらりと人を動揺させるような台詞を吐いてくれるのだから、警戒するに越したことはない。

「勘違いされていたら困るから一応言っておくけれど、昨日のあれは、恋愛感情の意味だから」
「…あー…」

 逃げ場を塞がれた。釘を刺された。
 表現はいろいろだけど、つまり今のはそういう意図の発言だ。
 結構底意地悪いなぁ。優しいのも、あれはあれで素なんだろうとは思うけど。

「恋愛感情なのは、解ったけどさ。それって一般的な恋愛感情なわけ?」
「それは、一般的な恋愛感情がどういうものなのか、理解しての質問なのかな?」

 …うん、口で志摩くんに勝つのは無理かな。
 だって志摩くん、微笑んだままなんだ。まるで勝てる気がしない。いや、別に勝負してるわけじゃないけどね。
 ばっくんとか空霧くんなら、丸め込むのは簡単なのに。

「言い方が悪かった。志摩くんの言うところの好きっていうのは、具体的には私をどうしたいの?」

 口にした感情に、欲望が伴わない筈が無い。
 ましてや志摩くんのそれは『恋情』なのだと、本人が言っている。
 やんわりと弧を描く唇に若干見惚れながら、紡がれる言葉を追った。

「幸せにしたい」

 …。
 その陶酔的な笑顔に、私はやっぱり奇妙な寒気を覚えるわけだけど。
 今、その正体が解った。

 ときめきだった。

 だって、気付いてしまった。
 今までは無意識だったのだろう。けれど今、はっきりと、私は意識して認識した。彼がその人だと定義づけた。

(――きっと、そうだ)



 彼は私を殺してくれる。



 志摩くんと居て抱く奇妙な寒気に似た興奮も、安心感も、志摩くんに対する根拠の無い信頼も。
 全ては無意識で、そう認識していたからだった。





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