GOLD RUSH!
密室の狂人2
(あれは告白だと思って良いの…?)
と、歩きながら悩む。
性質の悪いナンパやキャッチを交わすのも、もう慣れたものだ。
志摩くんは私を好きだと言ったけれど、純粋に好意を持っているという意味だったらと考えることも出来て、下手に返事もしにくい。
雰囲気的には恋愛の意味だったんだろうけど、雰囲気なんてものは相手より私の精神状態の方が影響するに決まっているんだから当てにならない。
それに、志摩くんが私のことを、恋愛的な意味で好きだというのは、なんとなく納得できない。俗っぽいイメージが無いから。
(困ったな)
無かったことにするべきか。素直に受け取っておくべきか。
考えていると、派手な黄色が視界に入った。
――…ナイスタイミング。
「は、エンさんのこと?」
「そうそう、志摩くん」
どんな人なのよ。
聞いてみると空霧くんはぱちぱちと目を見開いた。inいつものファミレス。
ただでさえ大きな目が更に大きくなったその顔は、とても可愛い。
「ていうか、ツゲさんってエンさんと仲良いんじゃないの?」
「ん?何で?」
「だってツゲさん、エンさんのこと『志摩くん』って呼んでるよね」
それが何か?と私は首を傾げる。
名前で呼ぶって言っても、そんなに珍しいことじゃ――
「エンさんって、あんまり人に名前で呼ばせないし」
――うわぁお。珍しいことだったのか。
空霧くんの一言に内心引き攣りながらも、なんとか笑って流した。
「そうなんだ」
そういえば、クラスメイトも志摩くんのことを『炎村』と呼んでいた気がする。男子ならそんなもんかと思っていたけれど、誰一人として名前で呼ばないのは、志摩くんが望んだからなのか。
そして志摩くんが名前で呼ぶクラスメイトも、私だけだ。
「で、何でそんなこと聞くわけ?」
ごもっともな空霧くんの質問。そりゃあいきなりこんなこと聞かれたら驚くだろう。けど言いたくない。というか、こういうのって言って良いことなのか。
「んー、秘密かな」
「教えてくれないと、もう喋らない」
どうぞ。と言いたいけれど、喋らないという発言に空霧くん自身が涙目になっているので教えることにした。
倉間曰く、妖怪は嘘をつかないらしいし。「どうぞ」なんて言ったら本当にもう喋らなくなるんだろう。そしてまた勝手にダメージを受けるんだろう。ちょっと見たいなそれ。
「もしかしたら、志摩くんに告白されたかもしれないからさ」
「ぶっ」
変な告白だったけど。
思いながら言えば空霧くんが、葡萄ジュースを噴いた。私が告白されるのがそんなに意外か?
ふてくされた顔の私と、唖然とした顔の空霧くん。白いテーブルに広がる赤紫色。
…そういえば、初めて会ったときと真逆の光景である。
[*前へ][次へ#]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!