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GOLD RUSH!
密室の狂人1

「ねぇ、小鳥さん」
「ん?何?」

 にこにこと微笑む志摩くんは、西日に照らされて眩しく思えた。今日も綺麗だなんて、男子に対して持つ感想としては些か失礼なものなのかもしれない。でも、綺麗なものは綺麗だから。
 悔しいとも思わないくらいに。あまりに嵌りすぎた取り合わせに苦笑してしまうくらいに。放課後の教室。金色に染まる世界。光が差す窓を背景に、穏やかに微笑む少年。風がカーテンを叩いて、光の帯をゆらめかせる。

『最近楽しそうだったのは、友達が増えたからなんだね』

 ふんわりと微笑んでくれた志摩くんに、怖気を抱いたのはいつだっただろう。
 確か、倉間が学校まで私を拉致しに来た、その翌日のこと。
 楽しいのは友人が出来たから?
 そうかもしれないと納得して、そのままにしていたけれど、あの感覚は。

『魚沼さんと、仲良くなったんだね』

 あのときも。
 ぞわりと背筋が粟立つような、気持ちの悪さを覚えて、確か「普通に友達」って言ったらその感覚が無くなったんだ。
 あれは、歓喜。
 漸く望むものに巡り合えたと、今までに感じたことの無い満足感を知って。その初めての感覚に興奮して、恐怖して、突破した感情の臨界点が警笛を鳴らした。

「小鳥さんは、ひとりだよね」

 ――『一人だよね』。この世に一人だけしかいない、大事な存在だよね。
 いつもの志摩くんの台詞なら、そう解釈していただろう。
 ――『独りだよね』。自ら望んで孤独を選ぶよね。
 今は、何故かそう解釈することしかできないけれど。

「そう?」
「そうだよ」

 微笑みは狂気。
 それすらも、出来すぎた絵に神秘性を増す材料にしかならない。

「小鳥さん」
「うん?」

 志摩くんの眼の中の感情はひどく澄んでいて、なんだか不思議な色をしていた。

「だから俺はね、小鳥さんのことが好きだよ」





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