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GOLD RUSH!
プールに人魚4

 昼休み、『真夏の心霊特集』の話になった。
 テレビでやってたね、そんなの。お父さんが眠そうに見てた。

「落ち武者のやつめっちゃ怖かった!」

 と、楽しそうなみな子。台詞と表情が矛盾している。
 まぁああいうのは害が無いってわかるから楽しいんだろうけど。
 で、何か怖い体験した?という話になって。
 操は「強引なナンパに遭った」とか、みな子が「携帯電話をお風呂に落とした」とか、ある意味怖い話で盛り上がったわけだ。

「こっちゃんは?」
「残念ながら無難な夏休みでしたよーん」

 火の玉に遭遇って不思議体験はしたけど、葉湖さんの仕業というネタが割れているから不思議じゃないし。
 そもそも怖いと思わなかったし。

「でも昨日、変なもの見たかも」
「「何なに?」」

 興味津津な様子の双子。

「図書室で部活の記事書いててさぁ、気付いたら6時過ぎてたんだよね」
「マジで?時間忘れすぎだろ」
「頑張るねー」
「よ、よく集中力続くね…」

 驚く莉子と、感心した様子のみな子と魚沼さん。
 いや、時間の経過の早さが怖いって話じゃ無いから。

「でさ、図書室の前の廊下の窓からプール見えるでしょ?プールに人影が有ってさぁ。見間違いかもしれないけど、変質者だったら嫌だなぁと」
「へ、変質者…!?」

 魚沼さんの顔色が変わった。気弱な魚沼さんは、小動物みたいにぴるぴるしている。
 みな子が涙目に悩殺されてフォローに走った。

「いや大丈夫だって!もうプール使う授業無いし!」

 みな子のフォローはずれている。
 普通に考えて、学校の敷地内に変質者が出現した時点でアウトだろう。
 他のメンバーが生温い眼で見ているのに、何故みな子は気付かないのだろう。

「気にすること無いよ。見間違いかもしんないんだから」

 はは、と軽く笑って私もフォローする。寧ろこれ、みな子のフォローをしている気が。

「変質者といえば、駅前のコンビニの辺り出るらしいわね」
「「げ、やだぁ」」
「莉子以外は気をつけるように」

 にっこりと笑った操に、皆で了解する。

「あたしは良いのかよ」
「だって莉子だもの」
「理由になるのか」
「なるわよ莉子だから」

 柔道黒帯だし。
 軽やかな操の笑顔に、莉子は諦めたように溜息を吐いた。
 莉子と操は小学生からの付き合いらしく、莉子は操のことに関してだけ異様に諦めが早い。

 テンポの良い遣り取りに、魚沼さんの笑顔も戻ったようだ。





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あきゅろす。
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