GOLD RUSH!
プールに人魚3
――ぞわり、と。
背筋が粟立つような感覚に襲われる。
前に倉間のことを聞かれたときも、こんな感覚がしたような――、
「どうかしたの?」
「いや、何か、いきなり鳥肌が」
「大丈夫?空調がきついのかな」
心配そうな志摩くんに、大丈夫だよと返して。
気を抜けば引き攣りそうになる表情筋をなんとか宥めながら、嫌な予感が止まらないのは何故なのか。
答えを知りたいような、知りたくないような。
「…志摩くんは優しいよね」
そう言えば、志摩くんはきょとんと目を見開いて。
「……小鳥さんにとってそう在ることが出来ているなら、嬉しいよ」
聞いていて此方が恥ずかしくなってくるような、綺麗な言葉。
いつもの志摩くんだ。
微妙にほっとして、筆記用具とレポート用紙を片付ける。
図書室の外に出ると、日暮れが迫っているのがわかる。
あかい、そら。
何となく既視感を覚えた。校舎から夕焼けを見るのは久しぶりだ。サッカー部と野球部も練習を終えて、見下ろすグラウンドには誰もいない。
ふと視界を過ぎった何かに、視線を固定させる。
夕焼けの光を反射するプールの水がきらきらと眩しくて、はっきりとは視認できなかった誰かの影。
誰かが、何かが、水の中に見えた気がした。
「凄い夕焼けだね」
図書室から出てきた志摩くんの、感嘆したような声に同意する。
こんなに赤い夕焼けは久しぶりなんじゃないだろうか。
「うん」
きれいだよね、こわいくらい。
元文芸部の彼の文学的表現に、少し、笑った。
昇降口まで一緒に歩いて、さよならと手を振る前に思いついて聞いてみる。
「ねぇ、水泳部って活動、いつまでだっけ?」
「夏休みいっぱいまでだったと思うよ。それ以降は清掃しないから」
「だよねー」
じゃああれは何なのだろう。
内心首を傾げる。
多分、水泳部員でも無いのに、どうしてプールに。
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