GOLD RUSH! プールに人魚2 放課後の図書室は静かだ。 誰もいない。 本来居るはずの図書委員も、殆どが放課後の当番なんてサボってる。 「あれ、小鳥さん。どうしたの?」 突然の声に顔を上げると、志摩くんが居た。 何だろう。イメージ的に、物凄く図書室が似合う。 「んー、部活の記事書いてる」 「そう言えば、新聞部だったね」 にっこり、志摩くんが微笑んだ。 今回の校内新聞は夏休み中に有った大会の各部活動の成績のまとめだ。 サッカー部と卓球部が健闘した模様です。陸上は走り高跳びのエースが全国に行けたようだ。男子テニス部は一年生が頑張った。美術部でも佳作と優秀賞が一人ずつ。皆さんおめでとう。 というのをある程度硬い文章にして書けば良い。 「うん。うちの学校、吹奏楽部ないからさ」 「楽器が好きなの?」 「いや、中学では吹奏楽だったし、有ればそっちに入ったんだろうなーと思って」 「そうなんだ」 志摩くんが嬉しそうに眼を細める。 特に楽器とか音楽が好きってわけじゃなかったけど、部活の後輩は真面目な子が多くて面白かった。偶に私がずれた発言をすると慌ててくれて。 うん、私は悪い先輩だったかもしれない。 「全然やってないから、多分、もう指が動かないと思うよ」 丸一年以上楽器触って無いし。 …あ、ミスった。 「志摩くん、修正液持ってない?」 「持っているよ」 くすりと笑って、志摩くんが私の向かい側の席に座る。 鞄から出したペンケース、修正液。 ペンケースの中に三角定規やコンパス、カッター、糊も見えて、ほんとに何でも持っているなと笑った。 流石は志摩くん。 「…ん、ありがと」 「どういたしまして」 おぉ、何か、落ち着いてしまった。 志摩くんと話していると癒される。 「魚沼さんと仲良くなったんだね」 「あぁ、うん。みな子が気に入ったみたい」 転入生、魚沼則佳は私たちのグループと共に行動している。 魚沼さんはみな子に癒し系認定を受けたのだ。 確かに、色々と微笑ましい。 「…ん?小鳥さんは気に入っていないの?」 志摩くんが妙に可愛らしく首を傾げたので、私は笑った。 「あはは、普通に友達だよ」 普通に、友達。 みな子たちと同じように、どうでも良い友達。 「そう。良かった」 志摩くんはまた、にっこりと笑った。 [*前へ][次へ#] [戻る] |