GOLD RUSH!
蛇とランドセル3
神様を信じたことは無かった。
現代女子高生が神様に関わるなんて、せいぜいがクリスマスで、それだってキリスト。神には然程興味なし。
例えば、クラスに何人かいるキリシタンは神様を信じているかもしれないけれど、我が家は特に熱心でも無い仏教徒。
目の前にいる神様は、私の苦手な蛇の神。しかも外見が小学生。
(いくら美少女って言ってもね)
いきなり信仰心なんてものが芽生える筈も無く。
けれど詩月ちゃんは、仮にもというか、本格的に神様なわけで、そう考えると心配にもなる。
「普通に喋って失礼とか言われない?」
「誰が言うんですか。私は小学生です」
「あぁ、そっか」
私だけじゃなくて、誰から見ても小学生。なら咎められることも無いわけだ。
「ところで小鳥さん、随分簡単に納得するんですね」
「何が?」
唐突な物言いに、意図を尋ね返せば静かに微笑む詩月ちゃん。
「私が人では無いということ」
――あぁ、それか。
どうして簡単に信じられるのかとか、空霧くんたちにはいつも聞かれる。
ばっくんも倉間も、そんな私だから、本当に人間なのかとか、天然の入ったお人好しとか思うらしいけど。
「明音ちゃんも納得したんでしょ」
「単純な子ですから、親友の言うことは信じるそうです。けれど小鳥さんは違いますよね」
適当に流そうとしたら、失敗した。
嘘を吐くのは好きじゃないから、…参ったな。相手は神様らしいから、どうせ嘘を吐いてもばれそうな気もするし。
「それを誰かに言うわけじゃないなら意味が無いから。どっちでも良いなら、『本人が言うならそうなんだろうな』と思っておいた方が、相手も気分良いしね」
心底信じてるわけじゃないんだよ、実は。
変身シーン見ちゃった空霧くんは獣だけど、本性が獣なのか人間なのかというところは判断してない。
七対三の割合で、信じてるし疑ってる。友達だから信じる割合も多いけど、盲信したくは無いから。
空霧くんが獣で、ばっくんが獏で、始有さんと倉間が天狗で、颯姫ちゃんが淫魔。今目の前に居る詩月ちゃんは神様です。
――けどそれって、
「関係無いでしょ、仲良くするのに」
信じる必要も疑う必要もないことだよね、と言うと、詩月ちゃんは固まっていた。
意外と冷たい考え方かもしれない。好意を持った相手は知りたいと思うのが普通なのかもしれない。けれど私は特に知ろうと思わない。
流石に地雷は踏みたくないから、相手を不機嫌にしない程度の気遣いは必要。で、それ以上は不要。
刹那的って言う人もいるかもしれないけれど、その時に笑い合っていられることが私の中で第一だ。
「…そういう考え方も、有りますね」
復活した詩月ちゃんは、微妙な表情でそう言った。
貴方が神様だということも信じてはいない、と宣言したようなものだから仕方ない。
神様を信じたことは無かったけれど、詩月ちゃんが神様だって言うなら、それで良いじゃん。みたいな、ね。
[*前へ][次へ#]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!