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GOLD RUSH!
天狗面10

「待ってよ小鳥ちゃん」

 席を立った私を追いかけてきた倉間。
 レジで一緒に支払いを済ませ、店の外に出る。
 空霧くんはまだばっくんに説教をしているようだ。と言うか、ただの罵倒のような気もするけれど。

「本当に誤魔化せちゃったね」
「女の子だからね」
「…さっきから気になってるんだけど、女の子だからって、どういう意味?」

 何故って、それは世界の真理だ。そのままの意味。

「女の子は、同年代の男の子より言い訳が上手いもんでしょう」

 私が笑うと倉間は目を見開く。そんなに虚を突く返答だっただろうか。

「それだけ?」
「他に何が?」
「嘘の上手い妖怪なのかと思ったよ」

 また人外扱いされた!
 半眼になって抗議する。これを認めたら私は完璧に人外認定をくらうことになる。ただでさえ人間だということを疑われがちなのに、冗談じゃない!

「…嘘は吐いてないし、妖怪でもない。倉間は妖怪の方が好きだろうけどね」
「喰うにはニンゲンの女が一番さ。そういえば、イイ女は誤魔化し上手らしいよ?」

 軽い皮肉を交わされて、機嫌が下がる。流石に齢の功か。倉間は最低でも1300歳以上なわけだし。

「誰に聞いたの、そんな話」
「うちの親父。小鳥ちゃんはイイ女だね」
「この期に及んでまだ口説く?」
「いやぁ、これはもう性分みたいなもんだよ」

 あははは、と声に出して笑う倉間は悪役のようだ。行動的なラスボスって感じ。ナンパされたときの爽やか感が消え失せて、邪悪に渦巻いたオーラを発している。
 邪悪…いや、むしろ混沌?
 
「あっそ。…あぁ、私もう帰るよ」
「うん、ばいばーい」

 語尾に音符が付きそうな口調が妙に似合っている。

「小鳥ちゃん」
「ん?」

 ちゅ。

「またね」

 …まさか、ほっぺにちゅーとは。
 最後の最後で負けた、と若干悔しがりながらも、絶対顔には出さない。

 無駄に疲れるので二度と会いたくない、と思った。





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